在宅→職場「やる気が出てこない人」が当然の訳 働きが鈍った脳を慣らしていくのは時間要する

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オンライン会議を頻繁にやっていたという人も、しばらく「その場の空気を感じて発言する」「相手の感情を察して動く」場面から遠ざかっていたのに、今日からいきなり「さあ、がんばろう!」と言われても、無理な話というものです。

情報はリアルであればあるほど「脳の理解度」があがる

自らが行動せず、家からでもどこからでも、良質な情報を手に入れる方法はいくらでもあります。

ですが、実際に自分が見聞きしていない情報のやり取りでは、脳の反応は鈍くなりやすいのです。目にうつっても、リアルでないものは、脳の理解度が圧倒的に落ちてしまいます。

海外の研究報告によると、赤ちゃんが「実際の母親」と「画面上の母親」を見たときでは、前者のほうが理解系脳番地の反応が強かったそうです。リアルなほうが脳の理解度を深めるという傍証だと言えます。

オンライン会議では、お互いの皮膚感覚から受ける刺激がありません。人はお互いに物理的に接触していなくとも、何だかんだと肌で情報を得ているのです。

ネットやテレビなどを見ているときの脳は、ずっとぼけた目でぼけた音を聞いているような反応になっています。いくら画質が高くてもです。

つまり、リアルの体験と画面を通した情報は皮膚感覚に訴えるか否かという点でまったく異質のものなのです。

リアルな世界ならば必ずあるムダやノイズ、空気、匂い、といった情報がごっそりとそぎ落とされてしまったままなのです。

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同じ話をするのでも、オンラインや電話よりも直に会ってじーっとその人の声色を聞いたほうが、はるかにその人のことがわかります。リアルに会ったほうが、脳が活発に反応し、やる気効果も増大するのです。

ステイホームでリアルと切り離されていた人が、いきなりリアルたっぷりの世界に戻されれば、そりゃ疲れるし、やる気だってすぐには戻りません。

でも、大丈夫、「リアルに見る」「リアルに聴く」機会を増やすことで、脳が活性化し、やる気が戻りやすくなります。

働きが鈍った脳を少しずつ慣らしながらバックtoオフィスを私は推奨したいと思います。

加藤 俊徳 医学博士/「脳の学校」代表

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かとう としのり / Toshinori Katou

脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。脳科学・MRI 脳画像診断の専門家。1991年に、現在、世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測fNIRS(エフニルス)法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科で脳画像研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。加藤式MRI 脳画像診断法を用いて、小児から超高齢者まで1万人以上を診断・治療。得意な脳番地・不得意な脳番地を診断し、脳の使い方の処方を行う。『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社)など著書多数。

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