東日本大震災後の原発事故と似ている
──長年、戦争、貧困、テロを取材してきた柳澤さんにとって、新型コロナとは何ですか。
非常にたちの悪い、ずる賢い厄介な相手。人間が傲慢になってごまかしてきた社会矛盾に対して、おまえらそれでいいのか? 俺は入り込んでずたずたにするぞ、と警告を発している存在だと思います。
当初検査体制が十分でなかったとか、曖昧な受診の目安を訂正し、誤解だったと釈明した。休業を要請する一方で補償は後手後手、国民一律10万円給付のオンライン申請も、まったく追いついていない現状を浮き彫りにしました。
似てるなと思うのが、東日本大震災後の福島第一原発の放射性物質の拡散。原子力は安全だ、素人は黙ってろと専門家は言ってきた。事故が勃発するや「想定外」という言葉でごまかす。彼らがつくり上げたのは架空の安全神話でした。ではなぜ想定外が起きたのか、説明するのが専門家のはず。ところがそうじゃなかった。今回のコロナでも、従来路線でいこうとして、さまざまな不備があらわになった。
──今度こそ変わりますか。
いやあ、どうかな。その場しのぎでいこうとしか見えないですね。
緊急事態宣言の間、メディアが使ってた言葉で僕がいちばん嫌いなのが「出口戦略」。今いる場から脱出したとしても、それは次のトンネルの入り口。むしろもっと気を引き締めて備えるべきことがおろそかになってる。それにはメディアも影響してると思います。メディアにはわれわれが抱える根本的な問題を伝え、考えうる選択肢を提示する役割があるはず。
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