コロナで今度こそ日本は根本から変われるのか 戦場特派員→あさイチのヤナギーが語る

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──現場に出て愚直に事実を記録するのがジャーナリズム、と強調される中、最近は現場がデスクに指示を仰ぐという話が出てきます。

思考停止だと思いますよ。連日テレビに映るのも決まってJR品川駅とかね。みんな同じだと抜け駆けがないから安心。僕の記者時代は、自分が出し抜いてやるという思いがまだ強かった。カイロ駐在の頃、チュニジアで産油国会議があるというと皆一斉に向かった。その中で1人、レバノンに飛ぶ記者がいた。違う情報を取ることに意味があるんだと言っていました。

自分が見ている世界はごく限れらた一部

──ご自身の体験を通して、「戦争の実像は焼け焦げた死体。ピンポイント爆撃でも、米軍曰(いわ)く血を流さないキレイな戦争でもない」と書かれています。多くの戦場ジャーナリストが、最たる犠牲者である子どもたちを記録してきました。でも、ずっと疑問に思っていたのが、それが日本の視聴者に伝わるのかということ。現地記者の実感とハイテク爆撃映像との間が、スッポリ抜けてる気がして。

たぶん日本では、ミサイルが飛び爆弾が炸裂するのが戦場の映像であって、逃げ惑う人々はそのオマケみたいなものなんだと思う。

僕なりの解釈ですけど、カメラマンが180度カメラを回転して、自分の背後を撮ればいいんです。そこには戦火におびえる人々がいる。ただ、その映像を使うかというと絶対使ってもらえない。僕も実際にできなかった。だから自分が今見てる世界はごく限られた一部だということを、極力リポートに織り込もうとしました。

──ところで柳澤さんは、頑固一徹の会津人。ある学者が白虎隊を「ある種の思考停止だった」と言うのを聞いて、テレビに茶碗を投げつけそうになったと。戊辰戦争の悲劇から150年も経ちますが。

いや、たった150年です! 決して昔話じゃないんです。会津は一切合切すべてを失った。人間すべてを失うと、真に大事なものを守るべく頑固になっちゃう。それを否定されると、理屈抜きで茶碗投げるという(笑)。でも長州は勝者なので、「会津はまだこだわってるの? まあ獺祭(だっさい)、飲めよ」なんて言われちゃうわけです。

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