今、私が取材を終えてつくづく思うのは、武樋社長の人を育てる力こそが、女性活躍を可能にしたということです。同社は今、物件のオーナーを対象とした平日だけ営業するお店の出店を検討中です。なぜなら部屋を借りたい人は土日祝日に来店するため、従業員は平日しか休みをとれません。これはワーキングマザーにとって負担がかかります。
しかし、平日だけの店舗を新たに出店するとなると、今の店舗を誰が見るのかという問題が浮上します。武樋社長はこともなげに、「若手に任せようと思います」とおっしゃいましたが、私はそれこそ同社のいちばんの強みだと思うのです。
普通の企業ではベテランがメインの営業行為を行い、後輩はそれに同行して仕事を覚えたり、先輩の手伝いをしたりします。しかし同社はそこがまったく逆で、メインの営業行為は若手が行い、先輩社員はそれをフォローするという仕組み。本人の成長のため、あえて「困ったな」という経験をどんどん与えているのです。
それだけでなく、たとえば宴会で乾杯の音頭をとるというような「小さなヒーロー・ヒロイン体験」ができる機会を、日常的に設けています。それが社員に緊張と喜びをもたらすからです。
この社員のやる気を引き出す風土があればこそ、産休をとる女性社員とそれを支える若手社員の連携プレーがうまくいっているのではないでしょうか。たとえ経験が浅くても、社員自ら「私、やります!」と手を挙げる社風があれば、中堅社員が産休に入るからといっていちいち動じないですむ。社員が協力し合う風土があるから、たとえば子供が熱を出したため早退する人がいても、そのフォローが円滑にできる。
同社のやり方は、女性を引き上げるだけでなく、若手社員をも引き上げるものです。若くて実績がなくても、どんどんやらせてみる。その代わりいつでも相談にのるし、何でもサポートする。だから誰でも安心してチャレンジできる。これが同社に笑顔があふれている秘密だと思います。ファースト・コラボレーションから、学ぶべきことはとても多いと感じました。
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