ガソリン車で燃費トップ奪取、トヨタの危機感 ハイブリッドだけでは戦えない

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トヨタもハイブリッド車の低価格化を進めているが、それだけでは心もとなく、より高性能なガソリンエンジンやディーゼルエンジンを必要としていた。そもそも、ハイブリッドはガソリンエンジンとモーターを組み合わせたシステム。エンジンの燃費性能が上がれば、ハイブリッドの燃費性能も向上する。新型エンジンはハイブリッド車にもプラスに働く。

新型エンジン群の開発によって、ハイブリッドの分野でライバルを圧倒的に引き離し、ガソリンエンジンの分野でも競争力を高めるのが狙いだ。

ただ今回の新型エンジン投入はトヨタにとっても大きな挑戦だ。新型エンジンを1種類投入するだけでも、部品精度や鋳物の均一性など要求される製造水準は旧型のエンジンより段違いに高くなる。研究・開発レベルで性能が出せても、それを世界中で一気に量産できるかは別問題だ。それを2年間で14種類立ち上げるのは、そう簡単ではない。

開発と生産技術のエンジニアを集結

トヨタがその難問をクリアするメドをつけた背景には、昨年の組織変更がある。

トヨタは昨年4月に企画・開発から生産技術、生産機能を集約。同時期に竣工したパワートレーン(駆動システム)共同開発棟の2フロアに、エンジンや変速機などの開発と生産技術のエンジニア500人を集結させた。

「大部屋でワイワイガヤガヤ。開発と生産技術のエンジニアが一緒に働くことで生産技術の対応も早くなった」(足立主査)。新しい生産設備の導入などでも意思決定が早くなったという。

「ガソリンエンジンで最大熱効率40%超もいける」と足立主査は言うが、ライバルも黙ってはいないだろう。エコカーの覇権争いは、ますます熱くなりそうだ。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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