コロナ後が見通せない人に知ってほしい全体像 激変する力学、債務・為替管理の国際協調カギに
ここまではコロナ後にほぼ確実に起きる出来事を見てきた。ただし、コロナ後の国際協調について、話はこれで終わらない。コロナ以前からあった政治課題への取り組みが本格化する可能性があるからだ。
たとえば、先進国で共通していたのは、グローバル化の行き過ぎを軌道修正しようという声だ。成熟化した先進国が対外的な直接投資や証券投資を増やしても、輸出や国内生産の増加にはつながらず、国内の雇用や所得環境は盛り上がらないという悪循環が続いていた。
日本においては、対外投資からのリターン(所得収支)が拡大して、貿易黒字の縮小分を補ったため、経常収支の黒字は現在も維持されている。
だが、製品・サービスの対価である貿易収支の黒字は労働者にも分配されるのに対し、対外投資のリターンは主に資本の出し手に分配されるという違いがある。このため、対外投資が国内の所得格差につながるという点では、日本も経常収支赤字国と変わりがない。
コロナ後の新ブレトンウッズ体制?
これに対し、主要国はどんな対応に乗り出すだろうか。1つの参考になるのが、戦後のブレトンウッズ体制だ。
通貨・金融の協調管理を進めたブレトンウッズ体制では、先進国からの資本移動を制限しつつ、代わりに新設する国際復興開発銀行(世界銀行)が途上国などへ長期資金を提供するという政策も同時に取られた。これらは、各国の通貨引き下げ競争や投機的な国際資本移動を抑えることに有効だった。
金融界などの反発が予想されるものの、コロナ後についても資本移動や為替管理を含めた議論が行われる可能性がある。行き過ぎたグローバル化の見直しが、自由貿易の否定にまでつながることは到底考えられない。ただ、国際金融と関係の深い公的債務の管理が、国際協調の俎上にのせられることがきっかけとなり、健全な世界貿易の拡大という旗印の下、資本移動や為替管理でも世界が歩調を合わせる流れが出てくるかもしれない。
また、財政悪化への対応として、各国当局は連帯復興税のような課税構想を持ちつつも、コロナの被害が終わっていない現状下では、まだそれを打ち出すタイミングではないと判断しているようだ。コロナ終息後に復興税の必要性が増せば、G20(主要20カ国・地域)サミットなどの場で各国の共通課題として打ち出し、導入に向けて各国での政治的ハードルを下げようとするだろう。
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