迫る都知事選、都民喝采「小池劇場」の光と影 過去最多得票を狙うも、学歴詐称疑惑が再燃

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前回選挙で「自民の都政はブラックボックス」などと批判して、自民党擁立の増田寛也元岩手県知事(現日本郵政社長)、旧民進党を中心とする野党の統一候補となったジャーナリストの鳥越俊太郎氏ら、他候補を蹴散らして圧勝したのが小池氏だった。常に緑の衣装を身に着けての「パフォーマンス選挙」(自民都連)は「緑のタヌキ」とも揶揄されたが、都民は熱狂した。

今回は、3月下旬からの小池氏のコロナ対応をメディアは連日報じ続けている。「公務が最大の選挙運動」(有力都議)となっており、小池氏自身も「今回はあえて派手な選挙は避ける」(側近)とみられている。街宣活動に多数の都民を呼び集める選挙戦術は、コロナ対策での「3密」回避の方針に反するからだ。

「排除発言」からのリベンジ

1000万人を超える有権者による都知事選は「巨大な人気投票」(都選管)でもある。小池氏が目指すのは約291万票を獲得した前回以上の圧勝だ。投票率次第だが、猪瀬氏の過去最多得票(約433万票)への肉薄も視野に入れているとみられる。

4年前に「崖から飛び降りる」と出馬宣言し、首都のトップの座を射止めた小池氏。その勢いを駆って、2017年10月の衆院選直前に事実上の小池新党となる「希望の党」を立ち上げたが、自らの「排除発言」で急失速して選挙は惨敗。中央政界からの撤退を余儀なくされたのは記憶に新しい。

「今回の深刻なコロナ禍は、小池知事にとってリベンジへの千載一遇のチャンス」(閣僚経験者)となった。コロナ対策での政府を相手にした大立ち回りは「まさに小池流パフォーマンス」(自民幹部)ともみえたが、ネット上で「#百合子さん頑張って」とのハッシュタグがトレンド上位となったことなどが、小池戦略の成功を裏付けている。

中央政界ではすでに、「小池氏は改めて、初の女性総理への道を探し始めた」(自民若手)との見方が広がっている。都知事選で圧勝し、2021年夏の東京五輪・パラリンピックを成功させた主催者として、五輪直後に知事を勇退して中央政界復帰を目指すシナリオだ。

長らく1強を誇示してきた安倍晋三首相は、アベノマスクに象徴されるコロナ対応が不評を買い、支持率が急落。自民党内に「次の衆院選は安倍首相退陣後の2021年10月」(選対幹部)との見方も広がる。その場合、小池氏が9月5日の五輪閉幕直後に辞職すれば、次の衆院選出馬も可能となる。

もちろん、その時点での選挙情勢は「現段階では予測不能」(自民幹部)。ただ、「何が起こるかわからない選挙になる可能性は大きく、そこが小池氏の狙い目」(自民長老)ともなる。「ポスト安倍の権力闘争の泥沼化や、自民党の大幅議席減による保守再編の機運が高まれば、政界復帰した小池氏が台風の目になる」(同)ことも想定される。

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