ドイツ鉄道優遇の「緊急支援」、民間他社が反発 オーストリアは元国鉄と民間を平等に支援
民間オペレーターで最初に経営危機が伝えられたのは、チェコをベースにするレオエクスプレスだった。チェコは3月12日に非常事態宣言が発令、その後すぐに外出禁止令が発出されたことで中・長距離客が激減、同社の列車は通常時の約5%しか利用客がいない状況となった。その結果、4月7日までは1日わずか1往復のみの運行に減らされていた。
同社は2019年の利用者数が250万人、純利益200万ユーロと順調に業績を伸ばしてきており、今年は利用者300万人を見込んでいた。さらにドイツ国内では、鉄道版LCCのフリックス・トレインの運行も担い、こちらも増便されるほど好調だったが、コロナによって状況が一変してしまった。
同社の取締役であるピーター・ケラー氏は「この状況が続けば、我が社は2カ月が限度だ」「私たちには不動産部門や鉄道貨物部門もなく、インフラも所有していない。国から継承した資産がある旧国鉄企業と異なり、政府からの支援がなく、自分たちの資本が足りなくなれば民間企業は終わりとなる」とその窮状を訴えている。4月下旬には、旧国鉄であるチェコ鉄道がレオエクスプレスの買収を検討する、という話まで持ち上がっていた。
5月現在、レオエクスプレスは徐々にチェコ国内の列車運行を再開させているが、コロナ禍以前の利用客数には程遠く、同社の先行きはまだ不透明と言わざるをえない。
オーストリアは政府が運行保証
一方、オーストリア連邦気候保護省は4月20日、同国内で列車を運行するオーストリア連邦鉄道(ÖBB)と民間運行会社ウェストバーンの両社に対し、ウィーン―ザルツブルク間における1時間間隔の列車運行を維持させる公共サービス義務契約(Public Service Obligation:PSO)を一時的に結んだと発表した。この契約は少なくとも3カ月間は維持される。
PSOとは、営業上は不採算であっても路線を維持する必要がある場合、国や地方自治体が援助することで運行を保証するというもので、通常は離島への航空路線や地方ローカル線などに適用されるほか、ドイツでは都市圏においてもPSOが適用されている。
この契約は政府主導の下、同国の主要都市であるウィーン―リンツ―ザルツブルク間に、両社がそれぞれ2時間おきに列車を運行することで1時間間隔のサービスを提供することとされており、両社の列車は、ウィーン市内の発着駅が異なるほかは、途中停車駅などを同一にしている。
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