ドイツ鉄道優遇の「緊急支援」、民間他社が反発 オーストリアは元国鉄と民間を平等に支援
通常、両社の乗車券はそれぞれの会社が運行する列車に対してのみ有効だが、PSO契約では基本的なサービスを提供することに重点が置かれ、同額の普通運賃とすることで、相互の利用が可能となった。こうした措置は、競合するウェストバーンが運行を開始してから初めてのことである。通常時は各社ごとに販売される、低価格の割引運賃は設定されない。
オーストリア政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、3月16日から交通機関の運行本数削減を各鉄道会社へ要請。その後の感染拡大を受けて、同国内で運行されるオーストリア連邦鉄道、ウェストバーンの各路線とも、段階的に本数が減らされていた。
しかし、同国政府はたとえ状況に改善の兆しが見えなかったとしても、経済的な観点から公共交通機関の基本的なサービスを維持・強化させることを望み、とりわけ主要2都市間のサービス維持は重要であると考えていた。
このオーストリア政府の決定で画期的だったことは、世界中のどこを見てもナショナルフラッグキャリアや旧国鉄が救済面で優遇される中で、いわゆるナショナルキャリアたるオーストリア連邦鉄道のみならず、民間企業のウェストバーンとも同一のPSO契約を結んだことだ。
ウェストバーンの広報は、「非常に困難な局面において、公共交通機関を維持するという政府の先見性のみならず、(民間企業に対して平等な立場を与えた)その非官僚的な措置は、特別な称賛に値する」と、オーストリア政府の対応に感謝の意を述べた。
ドイツでは支援策に反発も
一方、ドイツでは、ドイツ鉄道(DB)に対する金融支援策をめぐり反発の声が上がっている。
移動制限により大打撃を受けたドイツ鉄道に対し、政府は2024年までに110億~135億ユーロに達する支援が必要になると示唆している。ドイツの航空大手ルフトハンザでさえ、その支援額は90億ユーロと言われており、それよりも大きい金額だ。
連邦議会、欧州委員会、ドイツ鉄道監査委員会の承認を条件に、政府はまず45億ユーロの緊急支援を行う用意があったが、これに対しドイツ民間事業者協会(Mofair)と、ヨーロッパの独立事業者組織(AllRail)の2団体は5月8日、政府によるドイツ鉄道への優遇措置に対し非難するコメントを出した。
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