台湾新幹線の車内業務はJR東海と何が違うのか NHKドラマで語られなかった台湾オリジナル

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点呼に続き、列車に同乗する車掌と販売員によるクルーミーティングが行われ、乗務の注意点や携帯品の確認、各自の時計が正確かどうかの確認を行う。出発前にも乗務点呼を行い、出発の最終確認をする。

JR東海の運輸所では当直者が何人もいて点呼がひっきりなしに行われている。一方で、高鉄では和やかな雰囲気を重視しているように感じられた。

おそらく両者の運行本数の違いによるものだろうが、高鉄クルーの休憩スペースはカフェテリアのようだし、ケーキやフルーツが無料で提供され、フィットネスルームがあるのも驚かされた。

女性社員の多さも和やかな雰囲気と無縁ではないだろう。全社の女性比率は34%だが運転士の11%、車掌の75%、販売員の87%が女性だ。JR東海の女性比率(全社10%、運転士12%、車掌22%)と比べても多い。

また、高鉄発足の際には台北MRT(都市鉄道)や航空会社、一般企業から幅広く人材が集められ、台湾国鉄からの採用はあまりなかったという。また、高鉄は台湾の就職人気ランキングではトップ3にランクされるという。台湾では、働きやすい会社としてとらえられているようだ。

自由席には「優先席」がある

JR東海では駅係員、車掌、運転士の三つの職種を経験するのが基本となっている。駅員と乗務員の連絡をスムーズにするためだ。高鉄は会社の歴史が浅く、ローテーション人事は難しい面がある。ただ、最近では販売員から車掌になったり、車掌から運転士になったりするという例も少しずつ増えてきたという。

サービス面で日本と違う部分はほかにもある。65歳以上の高齢者(条件あり)や体の不自由な人の運賃は通常の半額。自由席には「博愛座」と呼ばれる優先席も設けられている。旅行者用に荷物スペースもある。切符はコンビニでも購入可能で、改札外に出たときに切符は回収されずに乗客が持ち帰る。「切符を領収書代わりに使いたいというニーズがある」(台鉄広報)とのことで、領収書を別途発行する日本式と比べ、合理的といえる。

台湾取材から5年経った2020年。東海道新幹線ではチケットのネット予約比率が格段に向上し、特大荷物スペース付き座席のサービスも始まるなど、5年間で変貌を遂げた。新型コロナウイルス感染症の防止という新たな使命も加わった。日本と台湾の新幹線のサービスは、今後どのような方向に向かっていくのだろか。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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