台湾新幹線の車内業務はJR東海と何が違うのか NHKドラマで語られなかった台湾オリジナル
続いて、運行指令所を見学させてもらった。常駐スタッフは12人。70~80人が常駐する東海道・山陽・九州新幹線の指令所よりも所帯は小さいが、ブースごとに輸送指令、運用指令、施設指令、電力指令などのスタッフがいる点は同じだ。
運行開始当初、指令員と運転士のやりとりは英語で行われていた。外国人の指令員や運転士がいたためだ。だが、3年目までに全員が台湾人スタッフに変わり、現在のやり取りは中国語で行われている。
台湾新幹線も日本並みの高い定時運行率を誇る。「予定よりも2分遅れて走行すると、指令から運転士に問い合わせを入れる」(任主任)。ちなみに東海道新幹線は「1分遅れると運転士は指令員に報告する。報告がない場合は指令員が運転士に問い合わせる」(JR東海)という。
一方で、ITの活用については、台湾が2歩も3歩も進んでいる。任主任が見せてくれた携帯端末には、行路票や乗務員名や顔写真、座席情報や列車の在線位置などがリアルタイムで表示されていた。あらゆる情報がデータで結び付き一瞬で表示される。さすが「電脳立国」である。
桃園駅から左営駅に向かう途中の駅で、「輸送業務」を見学した。駅ホームには配置されているのは警備員を含め3人。列車の入線時には、ホームの安全に加え、列車や架線の状態を確認する。架線のささいな揺れ具合からパンタグラフの異常が発見されることもあるためだ。
列車が到着すると、駅員は停止位置や到着時刻、ドア開扉、側灯点灯などの確認をする。出発時はホームの安全確認、ドア閉扉、発車時刻、後部標識、線路、架線などを確認する。これらの作業は一つひとつ指を差し、声を出しながら行われる。安全を確認するためのこうした「指差喚呼」は日本とまったく同じだ。
車内販売員は正社員
一方で、異なる部分もあった。駅ホームでの発車アナウンスがない。「アナウンスはコンコースで行う。ホームでお客様を急がせないための配慮だ」(左営駅の林副駅長)。乗り遅れそうな乗客がいる場合は、コンコースにいる駅員が無線連絡して、列車の出発を10~15秒遅らせることもあるという。
車掌による列車のドア開閉は、日本のような乗務員室でなく、客車のデッキで行う。車掌は1~12号車のどこにいてもドアを開くことができる。その一方で、700Tは、車掌室に窓がなく、運転台側面に乗務員用出入口がない構造になっている。日本では駅員に加え、車掌も車両から顔を出して安全確認を行うが、高鉄では駅ホームの3人が安全確認を行うことになる。
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