台湾新幹線の車内業務はJR東海と何が違うのか NHKドラマで語られなかった台湾オリジナル

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

車内のサービス体制はどうか。販売員がワゴンを押しながら販売するスタイルは日本と同じ。日本では販売員は別会社が担当する例が多いが、高鉄の販売員は正社員だ。クルーの一員として、緊急時には運転士、車掌、販売員が共同して対応する。東海道新幹線では1列車に車掌が3人乗務するが、台湾新幹線では車掌は1人という場合が多い。それだけに1列車に2~3人が乗務する販売員の役割は重要だ。

日本ではコスト削減の観点から車内販売を廃止する動きが見られるが、販売員を正社員にすると日本以上にコストがかかるのではないか。この点について、高鉄の陳強COO(最高執行責任者)は「車内販売は利益を追求するものではなく、乗客へのサービス」と話す。ワゴンを押しながらゆっくりと歩くことで販売以外にもお客様にできることが出てくるという。

「車内販売をやめると乗務員たちが単に歩き回るだけになってしまう。サービスとしてはどうか」(陳COO)。

とはいえ、車内販売にコストがかかっているのも事実で、「最低限、スタッフの人件費くらいは稼ぎたい」という。

販売員や車掌だけでなく、大きなゴミ箱を引っ張った女性スタッフも通路を行き来し、乗客から空の弁当箱やゴミを回収している。これは日本にない、高鉄独自のサービスだ。

陳COOは次のように話す。

「日本の新幹線を見学した後で、車内に清掃スタッフを常駐させたほうがいいのではと考えた。やってみたら評判がよかったので、現在も続けている。ゴミは両手で受け取る、どのようなスピードで歩くのが適切かといったことも教育している」

車内清掃も日本流

こうしたスタッフを車内に常駐させることは、コスト増につながる。しかし、列車が終着駅に到着するまでに車内のゴミがきれいに片付けられていれば、到着後の車内清掃の負担が軽減される。トータルでは大したコスト増ではないかもしれない。

列車が終点に到着すると、白いユニフォームを着た清掃スタッフが車内に乗り込み、てきぱきと清掃を始める。日本でおなじみの光景が台湾でも再現されている。「清掃スタッフの指導係は日本で研修を受けました」(高鉄広報)。ここにも日本流が根付いている。

終点の左営駅には構内に運輸所が設けられている。運輸所とは運転士、車掌、販売員の詰め所である。

運輸所のドアを開けた瞬間、目に飛び込んできたのは高鉄の大きなロゴ。出勤点呼や乗務点呼の窓口だ。出社した乗務員は出勤点呼時に血圧検査、アルコール検査を行い、当直者から行路票や携帯端末を受け取り、行路の確認や注意事項の伝達を受ける。車掌は車内の切符精算時に乗客に支払う釣り銭も受け取る。

次ページカフェのような乗務員休憩所
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事