経済学が示す「コロナ感染」への有効な防止策 人々はどれだけ自発的に社会的距離を取ったか

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この変化は若干小さくも思えるが、緊急事態宣言以前のデータであることを踏まえると、妥当な値かもしれない。さらに、感染確認者数の数値が実際の感染リスクの指標としては正確でないことは認識されていたにもかかわらず、人々がこれに反応していたということは、興味深い結果だろう。

なお、このような結果は回答者の子供の有無や就業状況にかかわらず確認された。したがって、3月の休校措置により在宅を余儀なくされた親や、コロナ禍で失業し在宅時間が増えた人々の影響では、この行動変化を説明することはできない。

感染拡大が進む都道府県内においても、ソーシャル・ディスタンスは個人によって異なる。われわれは、感染者数の増加に対して迅速に行動を変化させることができた人々の共通点を分析した。その結果、教育水準による行動パターンの違いが顕著に表れた。

高卒者の行動は感染者数増加でもほとんど変わらず

大卒者は、感染者数の増加とともに、会話人数や公共交通機関の利用を著しく減少させていた。これに対し、高卒者の行動は感染者数が増加してもほとんど変わらなかった。このほか、女性と比べて男性は外食頻度を減らさない傾向があった。

このような傾向は、専門家会議のメンバーでもある東京大学・武藤香織教授らの研究結果でも指摘されている。武藤教授らはわれわれと同じく3月末にオンライン・アンケートを実施し、低所得者ほど「3密」の状況を回避できていないことを発見した。

なぜ人々のソーシャル・ディスタンスは教育水準や所得水準によって異なったのか?

筆者らはその原因を明らかにするため、さらに分析を進めた。考えられる原因はさまざまである。例えば、大卒者ほどテレワークでも遂行可能な仕事に従事している可能性がある。あるいは、高卒者と比較して大卒者は周囲からの批判に敏感で、社会貢献への意識が高いのかもしれない。

このほか、個人が予想する感染リスクの違いなど、計8個の仮説を立て、それぞれを検証した。すると、この行動格差は、業務形態や社会貢献への意識といった要因では十分に説明できなかった。

確かにテレワークに適した業務形態の回答者ほど通勤頻度を減らす傾向は確認されたが、大卒者ほどテレワークに適した業務形態の仕事に従事しているという傾向はみられなかった。また、大卒者ほど周囲の評判に対して敏感で、社会貢献への意識も高い傾向はあったが、それらの意識はソーシャル・ディスタンスに強く影響していなかった。

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