飛行機内「コロナ感染リスク」はどれほどあるか 客室内の「空気」は安心なのか、航空業界の課題
客室の空気は、主としてジェットエンジンによって吹き込まれる。燃料に汚染されていないクリーンな部分から空調設備に向けて圧縮空気が供給され、そこから客室天井のファンへと送られる。
ボーイング、エアバス両社とも、客室内の空気は機体の縦方向ではなく上から下へと流れており、これも感染の可能性を抑えている、と述べている。
その後、客室内の空気の半分は、医療グレードのHEPA(高性能粒子捕捉)フィルターを経由して再利用される。ここでウイルスを含む汚染物質のうち約99.97%が除去される設計だ。残りの半分はバルブを通じて機外に排出される。
航空機メーカーは、客室の空気は2~3分おきに入れ替わると主張しているが、科学者らは、実際には常に新しい空気と古い空気が混ざっているだろうと警告している。もっとも、換気の頻度が高ければ高いほど、それだけ早く古い空気も排出される。
航空機内の空気品質基準に対する勧告に協力してきたカンザス州立大学のバイロン・ジョーンズ教授は、「換気のペースという点で言えば、機内の空気は非常に高い頻度で入れ替わっている。この点から見れば、航空機のシステムは非常に優れている」と話す。
乗客の居住密度もリスク要因
だが、空気の流れは感染をめぐる複雑な方程式の一部でしかない。「航空機における最大の課題は、居住密度が非常に高いという点だ。多くの人々が狭い空間に密集しているので、空気の品質を維持するには、その空間に大量の空気を投入しなければならない」とジョーンズ教授は言う。
米疾病管理予防センターによれば、新型コロナウイルスは、濃厚接触、つまり6フィート未満の距離にある人と人との間で感染すると考えられるという。これは多くの航空機客室の約半分に相当する長さだ。
これほど短い距離における空気の流れは、何よりも予測が難しいと言われている。乗客は、各席の上方にある「ガスパー」と呼ばれる個別の空気吹出口によって、空気の流れをある程度自分でコントロールすることができる。