検察庁法案、急きょ「今国会成立見送り」の理由 内閣支持率が急落、安倍首相「初めての挫折」

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同法案については、自民党内から「説明不足のままの強行採決は、するべきでない」(石破茂元幹事長)などの慎重論が相次ぐ一方、元検事総長を含めた検察OBからの反対意見声明も相次いだ。

安倍首相は「恣意的な人事などまったくありえない」と抗弁したものの、与党内にも「法相も含め、説明不能の状態」(自民幹部)との見方が支配的となった。

多くの国民の反発を招いたのは、政府が1月末に黒川弘務東京高検検事長の定年半年間延長を閣議決定したことだ。検察庁法改正案について、政府は「黒川氏の定年延長とはまったく無関係」と繰り返したが、「過去に例のない定年延長を、後付けで法的に正当化する狙いは明らか」(立憲民主幹部)との批判を消すことができなかった。

肩透かしを食う野党

一方、主要野党にとって会期内の法案成立断念は「想定外の肩透かし」(国民民主幹部)となった。ありとあらゆる抵抗戦術で、野党の存在をアピールする狙いがあったからだ。

野党は、今回の政府与党の方針転換に「検察庁法改正案を切り離して、他の法案は審議・成立させるべきだ」と主張している。公務員の定年延長は主要野党が求めてきた改正でもあり、検察庁法改正も「63歳定年を他の公務員と同様に65歳に延長するだけなら問題ない」との立場だったからだ。

にもかかわらず、政府が法案全体を次期臨時国会に先送りしたのは、「検察庁法改正案だけを切り離せば、それをすんなり成立させるのは難しい」(自民国対)との判断があったとみられる。

野党などが問題視したのは黒川氏の定年延長だ。黒川氏が延長満期の前に自ら辞職するか、現検事総長が8月上旬以降も続投すれば、その時点で黒川検事総長案は消える。さらに、大詰めを迎えたとされる河井前法相と夫人の案里参院議員の公職選挙法違反(買収)罪で検察が立件すれば、「政権の検察への圧力説も雲散霧消する」(政府筋)可能性もある。だからこそ、政府与党は「まだ時間的に余裕がある」として法案全体を臨時国会に先送りしたのだ。

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