満員電車「まだ乗れる」は今後の社会では恥だ 日本の通勤電車は世界でも有数の「密」状態だ

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確かに、満員電車に乗る際、同じ床面積の車両でも、足が入ってもお腹周りや荷物の関係でなかなか車内に入れないことがあるが、車体が膨らんでいることでスムーズに乗車できるというわけである。裏返すと、鉄道会社はこのくらいしか混雑緩和策がないということでもある。

しかし、これは自慢できる話なのであろうか。日本の鉄道会社は通勤電車の運行に多額の設備投資を行っているというのに、座ることはおろか、ぎゅうぎゅう詰めの混雑というのは世界でもまれな現象である。

有給を取得して休日も混雑解消

旅行やレジャーに対する考え方も見直さなければならない。5月の大型連休に移動自粛が叫ばれたが、それでも帰省や海や山へ行く人は少なくなかった。大型連休は、数少ない長く会社を休めるチャンスである。移動したくなるのはもっともである。

いっぽう、ドイツでも移動自粛となり、メルケル首相の訴えが国民の心に響いて、それ以来、不要不急の移動がかなり減ったとされている。しかし、メンタル面でドイツ人のほうに余裕を感じる。

ドイツの有給取得率は100%だという。それに対し、日本はそもそもの有給日数が少ないにもかかわらず取得率はその半分にすぎない。有給取得=旅行やレジャーとは限らないかもしれないが、日本とドイツを比べると大きな差がある。通勤以外でも密を避けるためには、有給取得率を向上させ、休暇を分散させることも重要である。浸透すれば、旅行業界とて「書き入れ時が台無し」などということも緩和されるし、祝日そのものが不要になるかもしれない。通常時とピーク時の料金差も緩和されるはずである。

コロナ禍を、通勤電車の混雑や休暇のあり方を考え直す機会とすることも必要なのかもしれない。

谷川 一巳 交通ライター

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たにがわ ひとみ / Hitomi Tanigawa

1958年横浜市生まれ。日本大学卒業。旅行会社勤務を経てフリーライターに。雑誌、書籍で世界の公共交通機関や旅行に関して執筆する。国鉄時代に日本の私鉄を含む鉄道すべてに乗車。また、利用した海外の鉄道は40カ国以上の路線に及ぶ。おもな著書に『割引切符でめぐるローカル線の旅』『鉄道で楽しむアジアの旅』『ニッポン 鉄道の旅68選』(以上、平凡社新書)などがある。

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