益川敏英・京都産業大学教授(ノーベル物理学賞受賞者)--成果ばかりを求めたら大きな仕事は出てこない

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 そして、あこがれの先にはロマンがある。たとえば、ドン・キホーテ。彼は騎士道物語を読んで騎士にあこがれて、とうとう金だらいをかぶり、ロバにまたがって旅に出てしまいました。あこがれを抱き、ロマンを求めて第一歩を踏み出すことで、若者は成長していく。まあ、ドン・キホーテが成長したとは物語に書いていないですが(笑)。

--今は大学に入ること自体が、ゴールになっている風潮もありますね。

企業側も「大学ではこれだけのものを身に付けてほしい」ということが明確になっていないような気がします。だから、ブランド品を仕入れて加工は自分のところでやる、ということになる。

大企業は大量に新卒採用して、その企業として使いものになると判断した社員だけ中枢に残して、あとは配置転換したり子会社に出したりする。それで、有為な人材がダメになってしまうこともある。いざ、転職しようと思っても、まだまだ日本の大企業は新卒中心の傾向が強いのではないでしょうか。

ロマンを求めて歩き出しても、時と場合によっては「自分があこがれていたものとは違っていた」ということもある。そうしたときに再出発できるシステムを作ることが、日本の社会全体にとってプラスになると思います。

ますかわ・としひで
1940年生まれ。名大理卒、同大学院理学研究科博士課程修了、理学博士。東大原子核研究所助教授、京大基礎物理学研究所教授、同所長などを歴任。2003年京大退官し現職。京大名誉教授。08年ノーベル物理学賞受賞、文化勲章受章。

(週刊東洋経済)

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