河井前法相、「公選法違反で立件」の政治的背景 逮捕か在宅起訴か、揺れる検察の最終判断

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これまで捜査の節目には雲隠れを繰り返し、説明責任から逃げてきた河井夫妻の出処進退についても、安倍首相や党執行部が河井氏起訴の段階で議員辞職への道筋をつければ、「政治スキャンダルとしては一件落着」(自民幹部)となる。同夫妻については「地元広島でも政治家としてまったく信望がなく、自民県連もほとんどが辞職待望論」(自民選対)とされるからだ。

夫妻が議員辞職・失職すれば、衆院広島3区と参院広島選挙区の補欠選挙が10月か2021年4月の衆参統一補選として実施されることになる。新型コロナウイルス対応で来春までの衆院解散は「事実上困難」(自民幹部)との見方も多く、広島での2つの国政選挙の結果は政局にも影響を与える可能性が大きい。

広島の2補選は自民勝利か

参院広島選挙区は2人区で、自民と野党のすみ分けが続いている。「野党が本気で2議席目を狙う可能性は少ない」とみられている。「そもそも案里氏が割り込んだのが混乱の原因で、落選した溝手顕正元参院幹事長の再出馬か、系列候補が出馬すれば元に戻るだけ」(自民県連)だからだ。

これに対し、衆院広島3区は与野党激突となるのは確実だ。自民県連はすでに候補者選定を進めているとされ、克行氏が辞職すれば時間を置かずに候補を擁立する構えだ。野党も統一候補擁立に全力を挙げることになるが、「圧倒的な保守地盤の広島で、自民に対抗できる知名度と実績のある候補者探しは困難」(国民民主幹部)との見方も多い。

唯一の対抗馬と目されるのは2017年衆院選で河井氏に約2万票差まで迫った塩村文夏氏。しかし、同氏は2019年夏の参院選東京選挙区から立憲民主党公認で出馬、当選したばかり。元グラビアアイドルで広島でも知名度抜群だが、辞職して改めて衆院選に挑む政治的メリットは少ない。

有力な野党統一候補が見つからない限り、広島3区補選も自民勝利の可能性が出てくる。4月26日の衆院静岡4区補選は、自民が圧勝して安倍政権の窮地脱出のきっかけとなった。広島2補選も自民勝利となれば、安倍首相もその後の政局運営の主導権を維持できる。

もちろん、「そんなことは取らぬ狸の皮算用で、政権の命運はコロナ次第」(自民長老)ではある。それでも、これまでしたたかな政権運営で数々の窮地を脱して史上最長政権を実現した安倍首相だけに、「冷酷に河井夫妻を切り捨てることで、活路を開く可能性は否定できない」(自民幹部)との見方も広がり始めている。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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