河井前法相、「公選法違反で立件」の政治的背景 逮捕か在宅起訴か、揺れる検察の最終判断

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そこで問題となるのが、河井前法相、さらには案里氏を逮捕するかどうかだ。検察当局はすでに夫妻から複数回の任意聴取をしたとされるが、夫妻はそろって関与を否定している模様だ。となれば、逮捕して徹底的に調べるのが捜査の常道ではある。

国会開会中は不逮捕特権という壁があり、これまでの例からも国会への逮捕許諾請求には最高検や東京高検など上級庁の決断が必要となる。しかも、逮捕事由の説明を国会で求められるため、検察側にも「先に手の内をさらしたくない」との慎重意見も少なくない。

もちろん、国会が当初会期の6月17日に閉幕すれば、その後はいつでも逮捕できる状況となる。しかし、それは約1カ月先の話で、コロナ対応での会期大幅延長説も浮上していることから、「先のみえない逮捕戦術はとりにくい」(司法関係者)のが実情だ。

逮捕の代わりに在宅起訴が浮上

そこで、浮上しているのが在宅起訴だ。河井夫妻は任意での事情聴取には応じており、否認していても確実な証拠があれば起訴して公判に持ち込める。その際、夫妻を一緒に起訴するのか、前法相だけとするかは検察当局の判断次第だが、案里氏についてはすでに公設秘書が公判中で、禁錮以上の有罪確定となれば、この夏にも案里氏の連座制での議員失職が予想される。このため「政治的には克行氏だけを起訴しても、懲罰効果は同じ」(政界関係者)との指摘もある。

その場合、「河井氏起訴による国会審議への影響は限定的」(自民国対)になるとみられ、安倍晋三首相ら政権幹部が繰り返してきた「議員本人の説明責任」についても、捜査と公判を理由に棚上げできることになる。

在宅起訴のタイミングについては「コロナでの緊急事態宣言が全国で解除されるとみられる5月末から6月上旬」という噂も広がっている。その場合、与野党攻防が続く検察庁法改正案についても、政府側が「検察は政権に忖度などしない証しだ」と主張できるメリットもある。

河井氏はまさに司法のトップだっただけに、立件されれば任命責任も含めて安倍首相への打撃は大きい。しかも、総額約1000万円ともされる買収資金の原資が、自民党本部から河井陣営に投入された1億5000万円となれば、党本部なども捜査対象になる可能性があり、「政権ぐるみの犯罪」(司法関係者)に発展するリスクも否定できない。

にもかかわらず、自民党内で「早期決着論」が浮上しているのは、「河井夫妻問題を長引かせれば、結果的に政権の火種として拡大しかねない。コロナ対策の陰に隠れる形で政治的幕引きをしたほうが得策」(自民幹部)との思惑からとみられる。カジノを含む統合型リゾート事業をめぐる汚職事件が、秋元司衆院議員(自民を離党)の収賄罪での逮捕・起訴でそれ以上政界へ広がらなかったことも背景にある。

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