【鎌田浩毅氏・講演】一生モノの勉強法(後編)
最後にもう一つ、東京に来て思うのですが、男の人は皆同じ格好ですね。グレーの背広、紺の背広でネクタイをしたり、しなかったり。イタリアへ行ってみてください。イタリア男は違います。青や赤、黄色などすごく格好いいし、個性があります。ビジネスマンはネクタイをしていますが、実に鮮やかなデザインのもの。私は東京の男の人に格好良くなってほしいと思います。それから女性。パリやミラノ、ニューヨークで歩いている女性に比べると、やはり日本の女性の服装は非常に画一的だと思うのです。何かがはやるとダーッと皆が一緒になりますしね。日本人は没個性になりやすいので、着る物ぐらい自分で決めようではないかと。自分で好きな服を思いきって着てみませんか。その揚げ句の果てが今の私のスタイルなのですが、これを少しでも定着させたいのですね。
「心の京都」というか「心のファッション」というか、『人は見た目が9割』という本もベストセラーになりましたが、見かけというのは本当はすごく大事。日本では、見かけよりも質実剛健と言って、中身だけが大事だとずっと教育されているでしょう。実はこれはとんでもないのです。海外へ行ったら全然違いますよ。最初から中身なんか見えません。見えるのはまず外見です。外見がしっかりしているとわかってしばらく経ってから、中身に来るのです。だからこそファッションはすごく大事で、11兆円企業も生まれるわけです。日本人は非常に奥ゆかしいけれども、ここで殻を破れない。皆さんまじめなのですね。そういう方から変わってほしいのです。自分の着ているものをちょっとでもいいから変えてほしいのです。
授業でも同じことを言いますが、私は今53歳で学生の親と同じぐらいの年齢なのですね。学生が「うちの親父を変えたいのだけど、とても無理。どうしたらいいですか?」と聞くので、私は「お父さんに素敵なネクタイをプレゼントしてください」と答えました。ネクタイから始めれば良いのです。派手なネクタイができなければ、カフスボタンでもいいです。そういう小さなところからおしゃれをする。ブランド物で、ちょっとおしゃれで差し色に赤が入っているものなど。そうするとお父さんも抵抗なく変わってきます。「あなたのお父さんは、そのうち私みたいになりますよ」と学生には言うのですが(笑)。
私が次に東京へ来た時には、「東京って少しミラノに近くなってきたな」と思えるようになっていてほしいですね。それが日本の本当の意味での国際化だと思います。「心に京都」をと同じような意味で、「生活にファッションを」と言いたい。私の一生モノの知的な生き方の一つの達成だと思っています。
(終)
[当講演は2009年9月7日に開催されました]
1955年東京都生まれ。
1979年東京大学理学部地質学科を卒業。通産省地質調査所主任研究官などを経て、1997年より京都大学大学院人間・環境学研究科教授に就任。
「科学の伝道師」として、専門書のみならずビジネス分野においてもベストセラーを多数上梓。『週刊東洋経済』誌上で「一生モノの古典」を毎週連載中。
鎌田浩毅ホームページ http://www.gaia.h.kyoto-u.ac.jp/~kamata/
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