「コロナ休学・退学」に怯える大学生の困窮実態 大学により「支援の有無」も分かれ始めた

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冒頭の女子学生Aさんは言う。

「ノートパソコンは高額なので、一時的でも貸してもらえるとありがたい人はいると思う。大学の同級生で、自分のパソコンを持っていない子は何人かいます。いつも大学にあるパソコンを使っていました。自宅でやらなきゃいけない課題は、スマホのワードを使って親指で書いてましたから」

一方、前述した都内に住む母親は、長男の大学のサイトを見ても給付や援助の知らせはないと言う。

「国から大学への支援、補助をすべきだ」という声はあるが、4月末日時点の文部科学省のサイトには、日本学生支援機構が行う「新型コロナウイルス感染症に係る影響を受けて家計が急変した方への支援」が掲載されるのみ。各大学にも、主にこの支援を紹介するよう通達するにとどまる。

崖っぷちに立たされた学生にとって「待ったなし」の状況なのに、スピード感に欠けてはいないだろうか。希望する学生には無条件で経済支援をするか、せめて10万円の特別低額給付金を優先的に受け取れるなど、対策を取れないものか。

学生たちの切なる願い

4月30日。学費が払えない大学生らが増えているとして、複数の学生団体が国の予算で学費を半額にするよう求める1万663筆のオンライン署名を文部科学省に提出した。

「このままでは進学や在学が危ぶまれ、世代ごと未来を奪われる」

要請文に書かれた言葉から、切実さが伝わる。2020年度に大学や専門学校などで学ぶ若者は、1998年から、21世紀最初の年である2001年度生まれの「ミレニアムベイビー世代」が中心だ。この前後は、1学年が117万~119万人とあとの世代より人数が多い。

切迫した状況の中で、Aさんは学びと向き合っている。

大学のゼミの担当教員が、非常事態宣言のあとすぐにオンラインミーティングを催してくれた。それぞれの心境や困っていることがないかなど、丁寧に聞き取ってくれた。女性が事情を話すと、大学からの支援や学費の支払い期限を延ばしてくれることなどさまざまな有益な情報を流してくれた。他の学生も励ましてくれ「ひとりじゃないよ」のメッセージを画面から受け取った。

「先生からカミュの『ペスト』をぜひ読んでと勧められて、読んでみました。数百年前のことなのに、本の中で起きていることはそっくりそのまま現実の世界に思えました。小説の世界と現実の世界が一緒なんてショックでしたが、同時に今自分の置かれている現実を受け止めることもできた。本当に先生や仲間に感謝しています」

同じ大学でも、他のゼミの学生は「教授がオンラインに疎いから、全然連絡が来ない」と不安そうだった。

「これも格差ですよね。私は経済的な弱者かもしれないけれど、先生や仲間、母、友人と“人”には恵まれている。そこの部分は違いなく強者です」と誇らしげに話した。

しかしながら、今の状態がどこまで続くのか、先の見えない不安が押し寄せる。

「どこまで耐えられるかな。後期まで続くとやばい。生きてはいけるけど、心が持つか心配です。確実なセーフティーネットが欲しいのが本音です」

コロナ危機に怯えながら、支援を待っている。

島沢 優子 フリーライター

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しまざわ ゆうこ / Yuko Simazawa

日本文芸家協会会員。筑波大学卒業後、広告代理店勤務、英国留学を経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。主に週刊誌『AERA』やネットニュースで、スポーツや教育関係等をフィールドに執筆。

著書に『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)、『部活があぶない』(講談社現代新書)、『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)など多数。

 

 

 

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