金正恩氏、20日ぶりに報じられた「動静」の意図 空白期間に金氏はどこで、何をしていたのか

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金委員長は2020年初の現地指導として、1月に順川リン肥料工場を訪れている。同工場を「今年の経済課題の中でも党が重視する対象の一つ」と紹介していた。そこを5月1日のメーデーという北朝鮮の祝日に訪れたことは、金委員長の現地指導の場所としてもっともふさわしいものだったと言える。

「健康異常説」が広がる中で、金委員長の実妹である金与正・党第1副部長が後継者だという説も浮上した。今回の現地指導でも、完工式の壇上に金委員長とともに金与正氏の姿が確認された。権力が世襲されてきた北朝鮮において、金委員長の血族であり、次なる指導者は金与正氏だと考えることはあながち的外れな推測ではない。ただ、壇上に上がったことだけをとらえて、金与正氏を次期後継者とみなすのも無理がある。

繰り返される根拠のあいまいな報道

今回の動静報道では、ことさら金与正氏がクローズアップされているようにも思えるが、これは金与正氏を「後継者」とする国外メディアの報道を意識して、わざと映像を増やしたと解釈することもできる。また、壇上の席順は、北朝鮮の儀典に従ったものにすぎないという見方がある。

ひとまず金委員長の健康異常説は収まったが、北朝鮮に関する情報の真偽を見極めるのは難しい。韓国では特に、4月15日に行われた総選挙で当選した脱北者出身の2人の国会議員による「(金委員長は)死亡した」「(健康が)異常だ」との発言が注目を集め、健康異常説がさらに過熱した。

中国から医師団が北朝鮮に派遣されたといった情報も流れ、中国政府はこれを一貫して否定した。中朝間は現在、国境が封鎖し、陸路でも空路でも往来ができない。こうした報道が根拠もあいまいなまま繰り返された。

北朝鮮は情報を管理できる国だ。流れ出る情報が限られている分、根拠に乏しい報道が生じやすい。今後も指導者の空白期が生じたり、後継者説が出てくる可能性は高く、われわれはそのたびに情報に振り回されることになるだろう。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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