「eKクロス スペース」は王者N-BOXに勝てるか 実車でわかったデザイン・質感・使い勝手

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収納スペースは、各車それぞれ工夫を凝らしている。eKクロス スペースでは、助手席側の2段式グローブボックスの上段を引き出しにしていることが目に付いた。逆にスライドドア内側にカップホルダーなどが備わらないのは、不満に思う人がいるかもしれない。

320mmのスライド量は先代より60mmアップ(筆者撮影)

後席は左右別々にスライド、リクライニング、折り畳みが可能で、スライド量は約320mmと軽スーパーハイトワゴンでトップを誇る。おかげで中間ぐらいにセットしても、身長170cmの筆者なら楽に足が組める。スライドと折り畳みのレバーがどちらも背もたれにあり、使いやすかったことも報告しておこう。

ただし、この面ではライバル車にアドバンテージがあることも事実だ。

跳ね上げ機能を持つ「N-BOX」のリヤシート(筆者撮影)

タントは助手席側のセンターピラーをドアに内蔵したおかげで、広大な開口部を実現している。

N-BOXは、多くの車種が後席下に置く燃料タンクを前席下に収めたセンタータンクレイアウトとした結果、後席座面跳ね上げ(チップアップ)という独自のアレンジを実現している。

コロナ収束後の販売に期待

軽スーパーハイトワゴンのユーザーの多くは、本来の荷室はほとんど使わない。後席を後部までスライドさせるとわずかな空間しか残らないうえに、リアゲートが天地に長いので開け閉めしにくいからだろう。

逆に荷室として活用しているのは、後席足元のフロアだ。そうなると、開口部が広いタント、床が広くできるN-BOXは有利である。だからこそ三菱はスズキともども、クロスオーバーという異なる魅力を提示したのではないかと予想している。

昨年発売されたeKシリーズは、三菱の車種としては久しぶりに軽自動車の年間販売ランキングでトップ10圏内に入った。今は新型コロナウイルス感染拡大で購入どころではないが、収束後にクルマを買う気持ちが多くのユーザーの中に芽生えてくれば、eKクロス スペースは一定の支持を受けるだろう。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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