金正恩「重体説」「死亡説」、どちらが正しいのか

錯綜する情報、それでも北朝鮮は沈黙を守る

また、4月12日に行われた日本の国会に相当する最高人民会議は、3月下旬に開催が予告された際、4月10日と発表されていた。実際には前述したように4月11日に政治局会議が、翌12日に最高人民会議が開催されたが、これも健康異常説の根拠の一つとなっている。延期の理由について、北朝鮮側からの説明は今でもない。

ちなみに、金委員長は最高人民会議に出席しなかったとされている。これは、最高人民会議に出席する資格となる「代議員」に金委員長がなっていないことに加え、2019年に改正された憲法で、金委員長が兼任している国務委員会委員長職は「朝鮮民主主義人民共和国の最高指導者である」と規定されているからだ。したがって、金委員長が最高人民会議に出席しなくても、憲法上はおかしいことではない。

一方で、韓米メディアの報道に対し、韓国政府は「北朝鮮で特異な兆候は見られない」と一貫して否定している。また、アメリカのトランプ大統領も「(CNNの報道は)偽の情報だった」と否定している。

過去の指導者の死はどのように報じられたか

間欠泉的に流れてくる情報を判断する前に、過去、北朝鮮が指導者の死に対してどのような行動を取ったのか、すなわち報道などを通じて世界にどのように知らせたかを振り返るほうがより事実に近い判断ができるのではないだろうか。

北朝鮮は建国以来、すでに2人の指導者の死を経験している。前述した金主席、もう1人は金委員長の実父である故・金正日総書記だ。

1994年7月8日に金主席、2011年12月17日に金総書記が亡くなった時、発表直前まで北朝鮮メディアはなんら動きがなかった。例えば、金総書記の時には、死去が発表された日の午前10時に「正午に特別放送を行う」とアナウンスされ、その2時間後に予告通り、金総書記の死亡が発表された。

1994年の金主席の場合も、ほぼ同様だ。そして、どちらともそれまでは死亡説や重体説はいっさい出ておらず、兆候も感じられなかったのである。

金総書記の場合は2008年に病に倒れたことがある。脳卒中だとされており、その後回復して公の場に出てきた時は、確かに病気をしたのだろうという姿が見て取れた。そのため金総書記の健康状態は注視されてきたものの、その後も現地指導を精力的に行い、また金委員長への後継体制づくりに集中するなど、2008年当時よりも健康への関心が薄れていた時期での死亡発表だった。

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