デンソー「QRコード」が世界に普及した奇跡 カイゼンの現場力とラグビー型プレーが結実
最大手のセブン-イレブン・ジャパンは、最先端のPOSレジを導入したものの、バーコードの読み取りに苦労していたという。初代POSレジではペンリーダー型のスキャナーを採用していたが、読み取り精度に難があったのだ。
デンソーは、レジメーカーのTEC(現・東芝テック)と共同で、独自開発したCCDセンサーを組み込んだバーコードスキャナーをPOSレジ用に採用することを提案、採用される。どのメーカーのリーダーも読めなかったようなバーコードも、デンソーのリーダーは読むことができた。当時のシェアは100%になったという。
その後、セブン-イレブンからの要望を受けて検品用スキャナーも開発。デンソーは、コンビニでの事業を通じて、自動車業界だけでは遭遇できない多様な読み取り場面を経験し、読み取り技術の幅を広げ、技術を蓄積していった。
一方、製造業の現場では「バーコードかんばん」での管理に限界が見え始めていた。横方向の1次元だけに情報を持つバーコードではなく、横と縦の2次元に情報を持つ2次元バーコードに社会のニーズがあるのは明らかだった。
既存の2次元コードは、主に3つが先行していた。大容量の情報格納が得意なPDF 417、小サイズ印刷に強いデータマトリクス、高速読み取りに強いマキシコード。結論からいうと、デンソーのQRコードは3つの長所を取り入れたものである。
通勤電車でヒントをつかんだQRコードの父
なかでも同社は高速読み取りを重視したが、それを可能にする読みやすい新コードを開発することは簡単ではなかった。そんなときに、QRコードの父といわれる原昌宏は、通勤電車から見た景色から大きなヒントを得る。
「あるビルの上層部に特徴的なデザインがあって、そのビルだけがはっきり見えたような気がしたんです。そこから、定位置に特徴的な模様を付けて目印にすれば、素早く認識できる。その目印を3つの隅におけば、上下左右の方向性も認識できると考えました」
QRコードのカギとなる、切り出しシンボル(ファインダーパターン)の着想を得た瞬間だった。
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