人身事故が激減、東急の「全駅」ホームドア戦略 あの手この手繰り出して整備計画を前倒し

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ホームからの転落件数は、ホームドアの整備と反比例の関係を示している。2014年度は131件もあったが、2015年度は100件、2016年度は78件と減少傾向に。田園都市線の渋谷、たまプラーザ、長津田など計12駅で供用を開始した2018年度は42件に減り、2019年度は10件にとどまった。

同社が東横線・田園都市線・大井町線の全64駅へのホームドア導入を決定したのは2015年1月。田園都市線では導入に向け、ドアの位置をそろえるため、6ドア車をなくして4ドア車へ統一する置き換えを始めた。

当初は2020年末までにホームドアの整備を完了する予定だったが、2017年5月に2019年度末へと、計画を前倒しした。同社総括課の担当者は「4ドア車両への置き換えが完了したことや、夜間回送列車によるホームドア一括運搬など、工期短縮・工費削減のための工夫を重ねながら設置を進めてきたことで前倒しを実現した」と説明する。

各社で進む駅と踏切の安全対策

駅と並んで事故が起きやすいのが道路と交わる踏切だ。2019年度には東急線で7件の踏切事故が発生した(国土交通省届出事故件数)。 同社は踏切全体を検知して立ち往生した自動車など、運転士に異常を知らせる「3D式障害物検知装置」を2019年度末時点で計83カ所に導入している。2021年度末までに、世田谷線とこどもの国線、もともと踏切がない田園都市線を除いた、すべての路線の踏切135カ所に設置する方針だ。

一方で同社安全戦略推進委員会の担当者は「新しい安全設備を付けることで、新たなリスクを生む場合もある。安全が必ず確保できるといった慢心に捉われず、絶えず意識・行動し続けることが重要だ」と気を抜かない。

東急に限らず、大都市圏で運行する鉄道各社はホームドアの設置駅を増やしている。JR東日本は今年3月末までに山手線と京浜東北・根岸線を中心に48駅で設置を完了した。4月7日には、シンプルな構造で軽量化した「スマートホームドア」を積極的に導入することでホームドア整備の早期展開を目指す、と発表した。

スマートホームドアの重量は約200kgで従来型(約350kg)より大幅に軽く、工期も最大4割短縮できるという。2020年度は京浜東北線の与野、東十条、上中里、新子安、中央・総武線各駅停車の市ケ谷、亀戸、小岩などに導入する予定だ。併せて、 踏切の安全対策についても、転倒した人を感知しやすく、雪や雨による誤検知を減らせる高機能版の障害物検知装置の導入を拡大する方針を示している。

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