【産業天気図・鉄鋼】自動車・電機需要伸び前半「曇り」に回復、ただ建材の落ち込み続き「晴れ」まだ遠い
09年10月~10年3月 | 10年4月~9月 |
鉄鋼業界は2009年10月~10年3月が前回予想(9月)から一段改善し「曇り」となる見通し。各種政策効果で自動車・家電需要が回復、アジア需要も底堅い。ただ建材向けなどに厳しさが残るため、業界は右肩上がりで景況感が回復する状況では決してない。2010年4月~9月も「曇り」止まりだろう。
09年2月に550万tを割り込んだ国内粗鋼生産は、10月には879万tまで回復。各社一斉の減産も効いて製品価格の落ち込みも限定的だった。エコカー減税やエコポイントなど政策の後押しを受け、自動車や電機向けが回復したのが要因。輸出もアジア中心に戻り、国内高炉各社が得意とする薄板鋼板などの回復が著しい。
ただ、建材向けは苦しい状況が続く。特に住宅着工の低迷など建築向けの落ち込みが厳しい。土木工事も民主党政権の「コンクリートから人へ」政策のもと、公共事業のストップが相次いぎ先細り。関連需要の多い棒鋼類の落ち込みも激しく、特に建材の比重が高い電炉各社の業績見通しに陰を落としている。
またコスト面に目を向けると、原料価格では鉄鉱石で33%、原料炭で57%という値下げが効いた高炉に優位性があった。電炉は原料の鉄スクラップ価格は海外需要が強く国内需要の減少が価格下落につながらない状況だ。ただ、来期に向けて原料高が鮮明なのが高炉原料だ。資源メジャーによる寡占化も進み鉄鉱石や原料炭の値上がりは必至の状況だ。価格交渉は年明け1月中旬以降にずれこむ観測も出ているが、予断を許さない状況だ。
こういった中、高炉大手では、新日本製鐵<5401>、神戸製鋼所<5406>が上方修正を発表。JFEホールディングス<5411>は通期予想を据え置いたが上振れ必至の状況だ。一方で、住友金属工業<5405>はシームレスパイプなど主力とする鋼管の市況悪化があり底ばいが続く。さらに持分のシリコンウエハの赤字が膨らむため経常ベースでは減額となった。足元需要が急減している電炉各社だが、東京製鐵<5423>は田原新工場の償却負担も始まり業績面では厳しい状況が続きそうだ。
高炉は回復基調にはあるものの、国内の建築需要低迷がマイナスで、アジア諸国の鉄鋼メーカーの生産能力の増強計画もあり過剰供給の不安がつきまとう。環境関連の負担も膨らむことが想定され、不安定な空模様が続きそうだ。一方、電炉も需要低迷から新年度も上期中心に底ばいが続きそうだ。
(山内 哲夫)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら