架空のストーリーだが、映画「シン・ゴジラ」では、巨大不明生物による危機に際し、議論の末に災対法の適用が決まり、自衛隊の出動要請につながっていく。実は新型コロナウイルス感染症についても、東京都知事は4月6日、ホテルに隔離している感染者への生活支援を目的に自衛隊に災害派遣を要請している。ほかにも千葉や神奈川、埼玉などの各県知事も同様の要請をした。
自衛隊法第83条第1項では「天災地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため必要があると認める場合には、部隊等の派遣を防衛大臣又はその指定する者に要請することができる」とある。新型コロナウイルス感染症は「その他の災害」に当たるという考え方だ。
アメリカはテロと自然災害に対応する組織が動いている
津久井弁護士は言う。
「今回も自衛隊法は柔軟に使っているけど、災対法は使ってないんです。他国の対応を見ると、自然災害への対応を担う危機管理部門が動いているんですね。アメリカでは、テロと自然災害に対応する連邦緊急事態管理局(FEMA)が動いています。一方の日本は? これは厚労省、これは内閣府、これは経産省など、省庁の縦割りの中で連携がうまく取れていません。(省庁級の)危機管理部門がないのは本当に大きな問題」
日本弁護士連合会が制定した「全国弁護士会災害復興の支援に関する規程」では、災害とは何かについて「感染症のまん延」を含めている。
「新型コロナウイルス感染症への対処は、医療者が中心ですが、今、喫緊の問題になっている生活や営業上の危機、不安感をどう解消するかは、大規模災害のときと本質は同じなんです」
4月19日には、被災者支援活動を継続しているNPOや弁護士、支援者のほか、国会議員やマスメディア記者などが参加して、オンラインによる「災害ケースマネジメント構想会議」が開催された。
「災害ケースマネジメント」とは、それぞれの被災者に必要な支援を行うために個別の被災状況や生活状況を把握し、各被災者に合った既存の法制度などを利用しながら支援する仕組みだ。この会議の冒頭では、新型コロナウイルス感染症に関する議論があり、仙台市の宇都彰浩弁護士から悲痛な声が上がった。
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