三陽商会「5カ月で社長交代」の厳しすぎる現実 新型コロナに加え、ファンドと委任状争奪戦
会見に同席した大江氏は、三陽商会の経営立て直しを引き受けた理由について、「これまでほぼ50年間、繊維がらみの仕事に従事してきた。多岐にわたる経験を生かして、キャリアの集大成となる仕事ができるのではないかと判断した」と説明。「ミッションを引き受けたからには不退転の覚悟で臨みたい」と厳しい表情で語った。
アパレル業界の中で今回の社長交代は想定内のことだった。2020年1月の中山社長就任は、対外的にけじめを示す目的で岩田前社長の退任を急いだ意味合いが強く、経営体制の大幅な見直しを決めるまでの「ワンポイントリリーフ」と多くは見ていた。
実際、紳士服の企画畑を歩んできた中山社長の手腕については、「厳しい経営状況の中で大胆な改革を実行できる力量もないだろう」(アパレル業界関係者)と疑問視されていた。
コロナ影響で100億円の営業赤字も覚悟
三陽商会の業績はじり貧状態だ。2015年にライセンス契約が終了したイギリスのブランド「バーバリー」の穴を依然埋め切れていない。加えて、売上高の6割強を占める百貨店での集客減が直撃している。
4月14日に発表した2020年2月期決算(14カ月の変則決算)。売上高は688億円と2019年3月に公表した会社計画比で5%減にとどめたものの、営業損益は当初見込んでいた黒字を達成できず、28億円の赤字となった。2018年末に約250人の希望退職を実施し、人件費を大幅削減したにもかかわらず、4期連続の大赤字となった。
足元では新型コロナウイルス感染拡大の影響が重くのしかかる。外出自粛の傾向が強まった3月は、月次売上高が前年比44%減と大きく落ち込んだ。緊急事態宣言を受けて多くの百貨店が休業した4月はさらなる売り上げ減が予想される。
会社側は今2021年2月期の業績予想を未定としたが、大江氏は新型コロナの影響次第で営業赤字が約100億円に膨らむ可能性を示唆。そのうえで「事業構造改革を断行し、2022年2月期に確実に黒字化するための施策を徹底する」と強調した。
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