コロナが外交の世界にもたらす深刻な帰結 外交官の往来停止で広がる国家間の乖離

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また、3月25日のG7外相会議もテレビ会談だったが、アメリカのポンペオ国務長官が「チャイナ・コロナウイルス」という表現にこだわり、共同声明を出すことができなかった。アメリカの自国中心主義はコロナ危機を前にしてますます勢いを増している。

通信技術の進歩の結果、首脳間のテレビ会談が実現できるようになったことは歓迎すべきことだ。ただ、同じ場所に集まって行う会談と異なり、画面を見ながらの会談では、丁々発止の踏み込んだ議論をすることはなかなか難しいようだ。

ヨーロッパで広がる「南北対立」

ヨーロッパの風景も様変わりした。ドイツのメルケル首相による「第2次世界大戦以来、最大の挑戦だ」という国民向けの格調高いスピーチが礼賛されている。しかし、これはあくまでも国内向けであって、ヨーロッパの連帯を呼びかけたものではなかった。

ヨーロッパは今、感染拡大が著しいイタリアやスペインと、感染者数の増加を抑え込むことに成功しているドイツなどの間で、援助などをめぐる「南北対立」が起きているのだ。

EUは3月15日、マスクやゴーグル、防護服といった医療用品の備蓄確保のため、域外輸出制限を決めた。感染者が激増したイタリアなどは域内国にマスクなどの支援を求めたが、EU内に積極的に応じる国はなかった。

財政的に厳しいイタリアやスペインはEUに対し、資金確保のため欧州安定メカニズム(ESM)の活用や「コロナ債」の発行を求めたが、自国負担が増えることを嫌がったドイツやオランダの反対で実現しなかった。イタリアのコンテ首相が「この危機にともに立ち向かえないなら、ヨーロッパは存在理由を失う」と怒るのも無理からぬことだ。

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