人気のブックイベントには共通項があった! 「ビブリオバトル」と「ブクブク交換」の発案者が対談
植田 ブクブク交換で3冊持ってきてくださいというと、ベストセラーの本は誰も持参しませんね。30人だと90冊集まるが、自分は本に詳しいと思っていた参加者たちは、知らない本ばかりあることにびっくりする。ある人が本について語るときに、「これは別れた奥さんにもらった本なんですよと」言えば、その人の人生経験やパーソナリティの推測ができる。
自然と名刺交換もしたくなるし、会社が近くにあれば今度ランチに行きましょうかといった話につながる。趣味的なテーマでまっとうなコミュニケーションができる場所を探している人は多かったんでしょう。インターネット上にそれはないと薄々わかっているんですね。
読書感想文は権力闘争だった!?
谷口 ビブリオバトルでアイスブレークして、あとはブクブク交換でしゃべってもいい。ビブリオバトルは書評のフットサルと言っているんですが、ブクブク交換はお茶会と言えるのかな。フットサルで遊んでお茶を飲む。
植田 そういえば僕は昔、読書感想文を書くのが嫌いでした。本のあとがきを適当にまとめただけなのに発表させられたりして、気持ち悪いというか。好きな本はひたすら読みたいのに、学校と本となると面白くない。
谷口 読書感想文が嫌われるのは当然です。語るとか書くという行為は相手が必要でしょう。本の紹介でも、相手がどういう知識や背景を持っているかを想定しながら、その人たちのために語る。ところが、学校で課される場合の読書感想文は誰に向けたものなのかが非常に不明瞭なんですよ。制度的には先生に向けたものだけど、先生は、自分に語ってほしいという体裁ではなく読書感想文を要求する。そこに齟齬がある。
もう一つ、本の読みかたというのは本人の経験や人格がかかわるものなのに、どういうふうに読むのがいいのか、ある方向性に強制されるように思える。読書感想文へのあらがいはある意味で権力闘争なんです。
ビブリオバトルの学校導入には懸念もあって、もし紹介する本や文章の事前チェックがあったり、全員参加を義務づけたり、教員の評価が入るということが繰り返されると、ビブリオバトル嫌いを生むことになる。
実は、東京都の武蔵村山市立第一中学校が授業に導入しているのを見せてもらったことがある。そこでは、読書推進ではなく、コミュニケーションの学びの場として、国語の授業ではなく総合学習の時間で導入していた。もし学校で導入するのであれば、総合教育とか体育の授業がいいかもしれない(笑)。体育の先生って、ドッジボールを勝手にやらせたりして、上腕二頭筋をこう使えみたいな細かいことを指導しないでしょう。ビブリオバトルに必要なのはその精神。細かいことを言い過ぎるのは向かないのではないかと思う。
植田 ブクブク交換も小中学校、図書館、企業の組合、マンションの管理組合などでも行われていて、コミュニケーションが活性化されていない場所で多く導入されている。
谷口 コミュニティの中で、ビブリオバトルがひとつのきっかけとなって、ほかの部分が回り出すというように、ビブリオバトルだけで完結させてしまわないことに意味がある。紹介する時間を5分にしているのも、話し尽くせないぐらいがちょうどいいから。あとで聞きにいきたくなるような、消化不良をきっちり作るところが面白いのかもしれない。
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