コロナ禍でも授業を続行した「学習塾」の大問題 「対面授業NG」要請に従わなかった塾も多数

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千葉県に住む母親は新4年生になる息子を地元の小規模塾に通わせている。春期講習からちょうど入会したばかりで、狭い部屋に子ども10人がびっしり。小窓とドアを開けたままにし、先生はマスクをして入り口に手指用の除菌剤が置かれていた。

「地域の小さくて古い塾だから、これで仕方ないのかな、もうやめさせようか」と諦めかけたら、突然「来週からZoomを用いたオンライン授業にします」と連絡が来た。

さらに、もう1つ通わせていた公文の教室からは、4月下旬までの休室の連絡がきた。緊急事態宣言が発令され市内の小学校が今月末まで休校になったため、その間は教室を閉めるという。しかも、4月分の会費は全額返金と良心的だ。

「小さい塾のほうが、もしかしたら対応しやすいのかもしれません」

子どもの安全を最優先にした対策を

大手塾でも、オンライン授業に切り替える動きはある。

早稲田アカデミーは、校舎での対面式授業を4月8日(水)から当面の間見合わせる方向で調整すると公式サイトで発表した。4月の授業は、生徒たちが自宅で受けられるオンラインでのライブ授業に切り替える予定だ。

サピックス(SAPIX)小学部も4月7日以降、4月中の授業をすべて取りやめにすることを発表した。

子どもの将来か。今現在のリスクか。2つを天秤にかけながら、親たちは葛藤する。学習塾にしても、政府からの休業補償がなんらなされないなか、経営か、生徒の安全かで迷い続けている。

日本で子どもの感染率は決して高くはないが、海外では死亡例もある。最優先されるべきは子どもの安全であるのは間違いない。命があれば後で学ぶことはいくらでもできる。

塾側は親の葛藤を理解し、適切な対策を講じてほしいと思う。

島沢 優子 フリーライター

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しまざわ ゆうこ / Yuko Simazawa

日本文藝家協会会員。筑波大学卒業後、広告代理店勤務、英国留学を経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。主に週刊誌『AERA』やネットニュースで、スポーツや教育関係等をフィールドに執筆。

著書に『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)、『部活があぶない』(講談社現代新書)、『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)など多数。

 

 

 

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