安倍首相、昭恵夫人をコントロール不能なわけ コロナ下の花見と布マスク配布で大炎上

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そもそも、安倍首相と昭恵夫人については「歴代首相と夫人の関係とはまったく異なる夫婦」(首相経験者)との評がついて回る。その原因は昭恵氏のファーストレディとして型破りな立ち居振る舞いだ。

第1次安倍政権発足時からネットなどで「アッキー」の愛称で呼ばれ、「神出鬼没ぶりも際立っていた」(官邸筋)。

居酒屋を経営し、深夜まで友人と飲み歩く昭恵氏の自由奔放な行動に、政界では眉をひそめる向きが多かったが、「反原発」「反TPP」などを公然と口にする家庭内野党ぶりが、好感度にもつながっていた。安倍首相も公式の席で「家庭の幸福は妻への降伏」と駄洒落を飛ばし、昭恵氏の言動を黙認してきた。

保守系野党加わり「大連立政権」の噂も

今回の花見騒ぎでも、「首相はその延長線上で妻を擁護するしかなかった」(自民幹部)とみられている。ただ、度重なる昭恵スキャンダルに苛立つ与党内からは「今回ばかりは『申し訳ない。妻には無思慮な行動を叱っておいた』と答弁すればそれで済んだのに」(自民長老)との声も出る。

そうした中で野党側は、安倍首相の恩師でもある小泉純一郎元首相が最近の週刊誌のインタビューで、「(森友学園問題で)首相は責任を取って辞めざるを得ない」と発言したことを取り上げた。これに対して安倍首相は「新型コロナウイルスの対策を全力でやっている。(職を)放り投げることは毛頭考えていない」と辞任を否定した。

たしかに、「戦争に並ぶ国難の中で、スキャンダルなどで政権が揺れることは国民も望まない」(首相経験者)との指摘は多い。政界の一部では自公政権に維新、国民など保守系野党が加わっての「大連立政権」なども噂されている。このため、首相サイドは「しっかりコロナに対応していれば、ネットでの炎上などは一過性に終わる」(政府筋)との強気の声が少なくない。

ただ、多くの世論調査では内閣不支持の理由が「首相の人柄が信用できない」がトップであることも事実だ。安倍首相は東京五輪招致の際、福島原発について「アンダーコントロール」と世界に胸を張った。しかし、身内中の身内でもある昭恵氏については「現状をみる限りコントロール不能」(自民長老)と言われても仕方がない。

小泉元首相の警告も含め、今回の炎上騒ぎは「時間とともにじわじわとボディブローとして効いてくる」(閣僚経験者)ことも否定できない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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