レナウン・三陽、「名門アパレル」存亡かけた攻防 両社とも株主からも激しい突き上げを食らう

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RMBキャピタルの細水政和ポートフォリオマネジャーは身売りを提案した理由について、「高品質な縫製技術など三陽商会の優良な資産を有効活用するには、リストラを続けるよりも、ブランドのライセンスを保有する総合商社など大手の傘下で再建したほうがよいと考えた」と語る。ガバナンス体制強化のため、RMBキャピタルは5月に開催予定の三陽商会の定時株主総会に向けて、細水氏の社外取締役選任を求める株主提案も行ったという。

百貨店への集客依存があだに

三陽商会は2020年2月に、「ザ・ノース・フェイス」を展開するゴールドウインで副社長を務めた大江伸治氏を5月末付で代表取締役兼副社長に起用する人事を発表。経営体制の強化で再建を目指す意思の表れとも受け取れるが、業績回復に向けた具体策が示されないままでは、第三者への会社売却のシナリオも現実味を帯びてくる。

三陽商会はもともと、業界内で「お公家さん」と呼ばれるほど資産が潤沢な会社だった。それが3期連続の赤字に加え、新規施策やM&Aへの投資もかさみ、5年前に274億円あった現預金は昨年末に108億円にまで急減。2020年1月に発表した2020年2月期第4四半期の決算書には、「継続企業の前提に関する重要事象」が初めて記載された。

現在も銀座や四谷の自社ビルや大量の有価証券を保有しており、当面の資金繰りに問題はないにせよ、売り上げの減少に歯止めをかけることができなければ、数年後に経営が火の車となる可能性もある。

三陽商会もレナウンも、百貨店を主要販路に、高品質・高価格帯の商品を主力としてきた点で共通する。百貨店が隆盛を誇った時代は売り上げもよかったが、現在の百貨店は都心・地方を問わず若者を中心とした顧客離れが深刻化。両社は長年にわたり百貨店の集客力に頼ってきたことがあだとなり、新規客獲得のために商業施設に直営店を出したり、若年層に合った価格帯の商品を展開したりするノウハウが乏しかった。時代の変化に合わせて柔軟に経営の舵を切れないまま、百貨店依存から転換するタイミングを見失っていった。

新型コロナウイルスの感染拡大により、国内では消費マインドの大幅な低下が長引く可能性も懸念されている。かつての名門アパレルは、この難局を乗り切ることができるのか。株主からの視線も厳しさを増す中、両社に残された時間と体力は決して多くない。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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