レナウン・三陽、「名門アパレル」存亡かけた攻防 両社とも株主からも激しい突き上げを食らう

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レナウンは山東如意傘下となった2010年以降も、ほとんど業績が改善していない。不採算ブランドの整理・縮小は進めたが、提携当初にもくろんだ中国での販売拡大は失敗。主力の百貨店向けブランドの苦戦で2013年度以降は減収が続き、数年おきに営業赤字と営業黒字をさまよっている状況だ。

2019年12月期(10カ月の変則決算)は売上高502億円(前19年2月期は636億円)、営業損益は79億円の大赤字(同25億円の赤字)に沈み、決算書には「継続企業の前提に関する疑義注記」がついた。

業績悪化に対して親会社が経営陣の刷新を求めるのも理解はできる。ただ、直近の大赤字の理由の一端は山東如意側にもある。レナウンは同じ山東如意傘下の香港企業に綿花や羊毛などの原材料を販売しているが、その売掛金の回収が滞り、2019年12月期に53億円の貸倒引当金を計上した。

この取引において親会社の山東如意は連帯債務者であるにもかかわらず、M&Aなどに多額の資金を投入したことが主因で資金繰りに窮しており、レナウンへの債務保証を行えていない状態だ。レナウンの毛利新社長は「(山東如意の)邱董事長が会長となり、レナウンは山東如意と一心同体ということがより鮮明になった。新体制全員で未回収金問題の解決に当たっていく」と強調する。だが、いまだに売掛金の回収時期のメドは立っていない。

日本の消費動向に知見が乏しい山東如意

レナウンは今後の成長への切り札にECの拡大を掲げるが、市場関係者の間では「山東如意傘下のまま経営再建が図れるのか」といった懸念もくずぶる。紡績工場を祖業とする山東如意は小売りや日本国内の消費動向に知見が乏しく、「レナウンの経営は生え抜きの日本人の幹部に任せるままで、親会社としての的確な指示が出せていなかった」(アパレル企業元幹部)。

2010年の資本業務提携に関する会見に出席した山東如意の邱亜夫董事長(左)とレナウンの北畑稔社長(当時)(撮影:尾形文繁)

足元では、「ダーバン」や「アクアスキュータム」などの主力ブランドは新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛の影響を受け、売り上げの大幅減を強いられている。別の業界関係者は、「もはやシナジーはほとんど発揮できていない。このままレナウンの浮上の兆しが見えなければ、山東如意が出資から手を引く可能性もありえるのでは」と推測する。

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