フリーの人は自衛のために会社を作るべきだ 新型コロナで改めて露呈した少なすぎる保障

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「コロナウイルスにもし感染したら、会社員は手当金が出ると聞きました。でも国民健康保険(国保)に加入する私たちって、そういう制度もないんですよね」と奥様。確かに、会社員は病気等で働けない状態が4日以上継続すると、会社からの給与が出ない代わりに、健康保険から「傷病手当金」として給与の約3分の2を最長1年半まで受けることができます。

一方で、フリーランスの場合、そもそも毎月決まって入る「給与」というものがないので、月の収入を保障する制度もありません。

ご主人は「フリーランスから法人成りして厚生年金や健康保険に入ったほうが得策でしょうか」と聞きます。会社組織にすれば人数にかかわらず社会保険加入が義務付けられますから、それも一考です。社会保険はそもそも「損得」で加入するものではありませんが、今後子どもが欲しいという2人にとっては、手厚い保障を得る手段として有効です。

健康保険には、傷病手当金のほか、「出産手当金」を給付する制度もあります。産前6週間、産後8週間、通算して約3カ月間半にわたり報酬の約3分の2が支給されます。その給付を受ける期間は、会社からの報酬は受け取れませんが、この出産手当金は非課税ですし、社会保険料については会社も本人も免除ですから、実質の手取りはそれほど減少しません。

会社員の女性は、出産後に育休を取ると育児休業給付金も受けられますが、これは雇用保険に加入していることが条件です。家族経営の場合、夫が社長、妻が従業員という形では雇用関係は認められないので雇用保険には入れません。

したがって、今回のフリーランス夫婦が2人で会社を設立(法人成り)しても、育児休業給付金を受けることはできませんが、社会保険に加入することになるので出産手当金はもらえます。この手当金があるのとないのとでは、家計へのインパクトがずいぶん違うでしょう。

サラリーマン世帯と大差がつく「遺族年金」の受給額

2人が万一、障害を負った場合、現在のフリーでの国民年金加入であれば、障害基礎年金のみが対象です。でも、社会保険で厚生年金加入となれば、障害厚生年金も上乗せ受給できます。

この障害厚生年金は「300カ月保証」の特別ルールがあり、短期加入者でも300カ月厚生年金に加入したとみなして年金を計算します。さらに厚生年金の等級には3級もあり、最低でも月5万円ほどの保障が受けられます。最近増加傾向にあるうつなどの精神の病気は、障害年金の等級は3級に該当することが多いといわれているので、厚生年金に加入している人であればカバーされます。

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