医療機関の受け入れ能力を圧迫する要因の1つになっているのが、感染者の入院・退院の基準だ。現在、PCR検査で陽性反応が出た場合は原則、全員が入院することになっている。退院時には2回のPCR検査を行い、どちらも陰性になる必要がある。
新型コロナウイルス感染症では、8割の感染者が軽症だと言われている。実際、東京都では3月29日現在で入院している382人のうち、96%にあたる367人が軽症・中等症だ。現状だと軽症の患者が入院せざるを得ないうえ、回復して症状がなくなっても退院できないケースが出てくる。これでは重症患者が入るべき病床を軽症者が埋めてしまうことになる。
一時滞在施設をどう確保するか
「軽症の方々を、自宅や宿泊施設などに移動しないとならないのは喫緊の課題。だがこれは、国が現在の方針を変更しないとできない。流行のステージが変わったので、軽症患者と重症患者への対応の仕方も変えるのが自然な流れだ」(釜萢常任理事)。
この「流れ」に沿う動きは、すでに出てきていた。3月27日、東京都の小池百合子都知事は定例の記者会見で、オリンピックの選手村を軽症者の一時滞在施設に活用する可能性を示唆していたのだ。だが、活用するには「多くの権利関係を整理しなくてはならない」(小池都知事)。
軽症者の一時滞在施設が必要なことは多くの専門家が指摘している。緊急事態宣言が出されれば、こうした権利関係に関係なく、都道府県知事の命令によって医療機関として活用することができるようになる。入退院の基準を変更するのには、まずこうした一時滞在施設を確保してからでなければならない。
また、緊急事態宣言が出されることで、医療器具などを政府が優先的に買い上げ、必要な医療機関に分配できるようになる。マスクやフェイスシールド、防護服などの物資確保は医療機関にとって課題になっており、「あと1~2週間で枯渇してしまうような医療機関が少なくない」(釜萢氏)。
政府が緊急事態を宣言する社会的なインパクトは甚大だ。発出には慎重な判断が求められるが、専門家の中で意見が一致したことの意味は小さくない。
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