公選法違反で辞職も、河井議員夫婦の絶体絶命 後継候補探しが本格化、問われる出処進退

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克行氏は首相補佐官など務めるなど安倍首相と極めて近く、菅義偉官房長官の側近として知られていた。選挙戦でも、安倍首相や菅氏が案里氏の応援に駆けつけ、溝手氏の陣営は「こんな馬鹿な選挙はありえない」(系列県議)と猛反発したが、「河井陣営の物量作戦の前になすすべもなかった」(同)とされている。

こうした状況から、地元の自民党広島県連は「河井夫妻に対する県民の批判は強く、議員辞職しなければ、安倍政権への不信にもつながる」(幹部)として、辞職を前提に案里氏と克行氏の後継候補選びを急いでいる。

参院補選は「自民有利」の可能性

今国会中に河井夫妻が議員辞職した場合、参院広島選挙区と広島3区の補欠選挙は10月25日投開票の衆参統一補選に組み込まれる。参院広島選挙区は一票の格差訴訟次第の要素は残るが、公選法違反での議員辞職となれば自民後継候補の苦戦は免れない。

ただ、同選挙区は長年、与野党各1議席の無風区だっただけに、同区に現職議員が残る野党陣営は新たな統一候補を擁立しにくく、結果的に「補選は自民有利」(自民選対)との見方が少なくない。

一方、克行氏が辞職した場合の衆院広島3区は当然、与野党激突となり、野党が有力な統一候補を擁立すれば自民苦戦は避けられない。ただ、野党側の候補者擁立は足並みの乱れが目立ち、「地元に無縁の落下傘候補では、圧倒的な保守地盤を崩すのは容易ではない」(国民民主党)との声も出ている。

窮地に立つ案里氏は、公設秘書起訴を受けて25日に世耕弘成参院幹事長と国会内で面会し、「今までどおり議員活動を続けたい」と伝えた。その際、新年度予算が成立する27日の参院本会議に出席する意向も示したが、当日は発熱を理由に欠席し、翌28日には議員宿舎で体調を崩して救急車で病院に搬送される騒動を起こした。原因は薬の飲みすぎという「無自覚な行動」(自民国対)とされ、克行氏も依然、雲隠れしたままで、自民党内でも夫妻への批判が加速している。

そうした中、安倍首相や菅氏は「緊急事態宣言も含めたコロナ対応に手一杯で、河井夫妻の進退問題など視野に入っていない」(官邸筋)のが実態とされる。

ただ、東京五輪・パラリンピックの延期で、政界ではコロナ収束を前提とした2020年秋から年末にかけての衆院解散説も浮上している。このため、自民党内では「早く議員辞職させて、秋までに事件を風化させないと、首相の解散権も縛られかねない」(自民選対)との声も出始めている。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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