公選法違反で辞職も、河井議員夫婦の絶体絶命 後継候補探しが本格化、問われる出処進退

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ただ、同地検は24日の起訴後も捜査を継続している。すでに、河井夫妻から複数回の任意の事情聴取を重ねる一方、克行氏の後援会幹部や同氏系とされる広島県議の事情聴取も進めている模様だ。さらに、複数の選挙関係者が「河井夫妻側から現金を受け取った」などと説明しているとされる。

捜査の結果、克行氏が選挙運動の対価として相当額の現金を配ったことが明確になれば、同氏自身も買収罪に問われることになる。その場合、司法当局が国会に対して克行氏の逮捕許諾を請求し、許諾を受けて逮捕・起訴するか、逮捕せず在宅のまま起訴するかは、今後の捜査の進展と司法当局の判断次第だ。

問題となる河井夫妻の出処進退

広島地検の捜査を指揮・統括する広島高検検事長は、24日の起訴後の27日に定年退官となり、30日付けで後任の検事長が赴任した。このため政界では、首相官邸寄りとされる東京高検検事長の定年延長ともからめ、「新体制では捜査が抑制されるのでは」(立憲民主党幹部)との臆測も飛び出した。しかし、地元では「広島地検は捜査の手を緩める気配はない」(司法関係者)との見方が支配的だ。

そこで政治的問題となるのが、河井夫妻の出処進退だ。公設秘書らが起訴された段階で、河井夫妻はそろって「このような事態となったことをお詫びします」とコメントしながらも、「選挙に集中していて(違反などは)知る由もなかった」(案里氏)などと、それぞれの直接的関与を否定し、説明責任も果たさずに議員活動を継続する意向を示している。

これに反発する野党側は、参院予算委審議などで安倍首相に議員辞職させるよう迫ったが、安倍首相は「進退は議員個人の考えること」「公判に影響するのでコメントは控えたい」とかわした。ただ、自民党内では「自ら説明しないのは議員失格」(閣僚経験者)との批判も相次ぎ、「後半国会への悪影響を考えても、進退の決断は早いほうがいい」(自民国対)との声も出始めている。

そもそも、事件の舞台となった2019年の参院広島選挙区では、自民党が党本部主導で2議席独占を狙って案里氏を擁立し、自民党現職の溝手顕正氏(元参院議員会長で岸田派重鎮)と野党系無所属現職の森本真治氏(国民民主党)と事実上の三つどもえの戦いの結果、案里氏が初当選、溝手氏が落選した。

その際、河井陣営の派手な選挙運動が報道されて事件捜査につながったわけだが、後日、自民党本部が河井陣営に通常の10倍となる1億5000万円のの選挙資金を支給していたことが発覚。自民党内から「とんでもないえこひいき」(閣僚経験者)との批判が噴出していた。

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