ANA、航空機1兆7000億円発注の真意 ボーイングとエアバス、両社から購入する意味を探る
一方、エアバスにとっても、JALから得たA350の大口受注は大きな意味を持つ。フランスやドイツなど欧州4カ国の航空機メーカーが統合したエアバスは、ボーイングと世界の中大型旅客機市場を二分。しかし、日本市場はこれまでボーイングのほぼ独壇場で、エアバスは大苦戦を余儀なくされてきた。
昨年10月の会見で、エアバスのファブリス・ブレジエCEOは、「今回の(JALとの)契約は、当社にとって日本市場における大きな突破口になる」と、今後のシェア拡大への期待を語っていた。
価格面だけでない“果実”
ボーイングにとってみれば、ANAの受注をエアバスに取られるわけにはいかない。ここ半年は、水面下でかなり激しい受注獲得合戦が繰り広げられたようだ。
一方、ANAにしてみれば、「いい経済条件をどう確保するかというのは、われわれの機種選定の大きなテーマだった」(伊東社長)。エアバスに対抗するために負けられない戦いに望んでいたボーイングから価格面で有利な条件を引き出したに違いないし、かえってボーイングに恩を売れたともいえる。兆円単位の発注だけに、たとえ数%でも価格が下がれば恩恵は小さくない。
ANAが手にした“果実”は、それだけではない。
これまで日本市場で絶対的な地位にあったボーイングをJALが袖にしたことで、ボーイングにさまざまな部材を供給する日本の航空関連産業に悪影響が出るおそれが指摘されていた。ボーイングが日本からの調達比率を落とすのではないか、という危惧があったのだ。
今回の機材選定について、伊東社長は「(そうした影響を)考慮したワケではないが、結果として日本の産業に貢献できるのであれば、大変うれしく思う」と語る。この決断によって、日本の政財界におけるANAの立場がより一層優位になると見る向きもある。
投資する金額の大きさから、今後の資金調達面でリスクを抱えたことには違いない。だが一方で、今回の機材計画は売り手よし・買い手よし・世間よしという「三方よし」の絶妙な結果を導き出したともいえる。
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