産油国「コロナと原油暴落」で立たされた苦境 1バレル30ドルで推移すればサウジすら厳しい
もっとも、GCC6カ国がすべて同じ状況にあるわけではない。危機への抵抗力には明確な違いがある。
カタールの財政は黒字であり、同国の経済は液化天然ガスの輸出に依存しているため、原油価格による直接的な影響は受けにくい。だが、オマーンやバーレーンなど、累積債務を抱えた小規模な産油国は、価格の変動に対する脆弱性が高い。
とはいえ、アルカーム・キャピタルによれば、原油価格が1バレル=30ドルまで下がると、「GCC全体の財政状況は急激に悪化する」という。
今年の原油価格が1バレル30─40ドルで推移すれば、湾岸産油国は数百億ドルの歳入を失う可能性がある。
アルカームによれば、原油価格が平均1バレル=40ドルだった場合、サウジアラビアの2020年の財政赤字は、当初予測の6.4%から16.1%へと拡大する可能性がある。1バレル=30ドルなら、財政赤字は22.1%に達するという。ロイターの計算では、これは約1700億ドル(約18兆5000億円)に相当する。
小規模な近隣諸国とは異なり、世界トップの石油輸出国であるサウジアラビアは、生産量を拡大することで価格下落の影響をある程度相殺できる。それでも、関係者が先週ロイターに語ったところでは、サウジアラビア政府はすでに各政府機関に対し、少なくとも前年比で20%削減した予算案を提出するように要請したという。
痛みを伴う措置
一部のアナリストによれば、この地域では政府による歳出が経済成長の主要なけん引車になっていることから、歳出削減はリセッションにまでつながる可能性があるという。
サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタールの各中央銀行は、新型コロナウイルスの影響を緩和するため、合計600億ドルの景気刺激措置を提示している。また各国政府は、民間セクターを支援するため、不動産取引手数料や光熱費を引き下げている。