ビッグデータをどうビジュアル化すべきか

企業価値を上げる映像コンテンツ3つのポイント(下)

ビッグデータからヒントを得たクリエーティブ表現

このキャンペーンの戦略においてまず最初に重要だったのは、アメリカ在住のインド人というターゲットに特化し、彼らを驚かせるような特別なメッセージを発信することであった。ブリティッシュ・エアウェイズは過去何十年とインド便を就航していたが、アメリカ在住のインド人にターゲットを絞ったメッセージを展開するのは、今回が初めてであった。しかしながら、「冷たく、インド人の里帰りに対する興味はない」と思われがちだった西洋系エアラインが、突然にインドの家族を思ったメッセージを発信したとしても、混乱するだけかもしれない。

ゆえに、旅の目的である〈家族〉という存在について、ブリティッシュ・エアウェイズがその心情を深く理解していることを証明することが必要であった。

「It’s never just about flying. 」(飛ぶだけが決して旅の目的ではない)。
ブリティッシュ・エアウェイズが販売しているのは、単なる座席ではなくなく、「家族孝行となる旅」であることを伝えた。

アメリカ-インド線のマーケティング強化において実践されたのは、キャンペーン映像の制作のみではない。同じタイミングで、「Visit Mum」と称した特設サイトをオープンし、インド往復のフライトを簡単に検索し、予約できるようなインターフェースを実現した。

さらには、映像の中に登場したオクラ料理のレシピまで掲載し、ホームシックであろうインドを思う人々の心に訴えかけるような内容のコンテンツを展開したのである。

このほか、機内におけるベジタリアン食のサービス提供やボリウッド映画の上映、家族単位でポイントを稼げるロイヤルティ・ポイント・プログラム、そして老人に対する特別な配慮などのサービスも徹底的に整備している。

低予算で効果的PRに成功

今回のキャンペーンはローンチから2週間も経たずして、大きな手応えを得たという。2万5000米ドルという比較的少ないメディア予算にもかかわらず、YouTube上では81万ビューを超えた。さらに全体の41%が、5分19秒尺の映像を最初から最後まで閲覧し、59.8% がブリティッシュ・エアウェイズのウェブサイトを訪れたというのだから、驚きだ。ちなみに、YouTubeページ上に寄せられたユーザーからのコメントもいくつかここでご紹介しよう。

「この映像はブリティッシュ・エアウェイズが魂を持ったエアラインであることを教えてくれた。人生における特別な人々とつながることの必要性を気づかせてくれる、美しい映像を作ってくれてありがとう」

「すばらしい広告! 自分もインド出身でアメリカに留学しているので、この映像は自分と母親そのものであるように感じる。グッドジョブ! ありがとうの意味を込めて、次の里帰りではブリティッシュ・エアウェイズを使わせてもらうよ!」

これらのコメントは、本キャンペーン映像が、ターゲットであるアメリカ在住のインド人の心の琴線を震わせることに成功したことが象徴されているだろう。

このようなポジティブなコメントを獲得していきながら、ローンチから1カ月ほどにして、このキャンペーンは口コミを基本としてTwitter経由で3000万インプレッションを獲得し、Facebookでは10万5000ものシェアを記録した。グローバル規模では、史上6番目に最もシェアされたキャンペーンになった。さらにHuffington Post、Yahoo News、New York Daily News、the Economic Times of Indiaといったアメリカとインドのトラディショナルメディアに紹介されたことによって、さらなる映像の拡散に成功した。全体的には、この映像に関するオンライン上の会話における91%が好意的な内容であり、50%以上もの人々が、ただリツイートやLike(いいね!)するだけでなく、コメントを残していった。

そして注目したいのが、この映像が売り上げに与えた影響だ。ブリティッシュ・エアウェイズの公式ウェブサイトからのダイレクト・セールスは21%も上昇し、インダイレクト・セールスにおいては26%上昇したという。さらには、本キャンペーン映像を見たユーザーのうち2.75% が、映像を見た後にフライトを予約したという数値も出ている。

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