AI活用で大きくコケる会社のダメすぎる実情 最大限使いこなすためにはコツが要る

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ほかにも問題はあります。この業界では、「ビジネスインパクト」という視点が抜け落ちがちだちという点です。

投資に対してどれだけ改善が進んだか、課題を解決できたか、儲かるようになったかなど、企業においてはごく当たり前の視点が、なぜか平気で後回しになったりするのです。

費用対効果について、理解と議論が不十分

具体的には、「ユーザーへの付加価値が向上することで、売り上げの向上が見込める」という方向性と、「プロセスの改善が進むことでコストの低下が見込める」という方向性の2軸がありますが、それが経営層とメンバー相互に十分に議論できていない企業が多いのです。

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機械学習の場合、求める性能とビジネスインパクトはセットで議論することができます。例えば、その機械学習モデルによって、大規模工場に設置された機械の故障検知を行いたいという場合。

「正解率99.9%で人間の検知率を超え、完全自動化できる。すると、年に100人分の人件費が圧縮できる。1人の年収の平均が500万円とすると5億円。この機械学習モデルの構築に5億円の投資をしても効果は見合うだろう」

と、費用対効果を試算できます。

機械学習に関わるメンバーのビジネスインパクトに対する理解が深まれば、この故障検知の例では、

「正解率99.9%は無理。でも98%は不可能ではない」「正解率が98%になれば、これまで100人で行っていた故障時の修理オペレーションは50人で対応でき、オペレーションの改善が期待できる」

といった議論もできます。

ここまで取り上げてきた事例は、AIでコケる企業の共通点といっても過言でないと思います。このような事態に陥っていないか、ぜひチェックしてみてください。

石川 聡彦 アイデミー代表取締役社長

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いしかわ あきひこ / Akihiko Ishikawa

東京大学工学部卒。同大学院中退。研究・実務でデータ解析に従事した経験を生かし、法人向けAIシステムの内製支援クラウドソリューション「Aidemy Business」を開発・運営している。著書に『人工知能プログラミングのための数学がわかる本』(KADOKAWA/2018年)など。「Forbes 30 UNDER 30 JAPAN 2019」選出。

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