三宅:思ったような収益事業ではなかったということですか。
佐藤:そうですね。そこで次のステップとして、2011年に角川書店と角川映画を合併させて、出版の強みを生かす体制にし、収益構造も徹底的に見直すことによって、初めて事業として成立するようになりました。ようやく映像事業がポートフォリオとして機能する会社になったのです。このように出版社が本業以外の事業を組み入れて、ポートフォリオを確立していくのは、とても大変なことです。ものすごく時間がかかりますし、それなりの投資も必要です。
コンテンツの権利の持ち方に革命を
三宅:出版、映画、その次のアニメとゲームについてはいかがですか?
佐藤:KADOKAWAは生得的にライトノベルやコミックが得意なので、アニメ事業については、割に早い時期にポートフォリオのひとつになりました。アニメはいろいろなアライアンスを組みながら進めていく事業です。自分たちの得意な出版との関連性から制作委員会にプロを集めるわけですから、やりやすかったのです。
ゲームについては、角川ゲームスという会社を作って、一生懸命育てている最中です。比較的順調に成長していますが、まだまだこれからです。その先はキャラクター、マーチャンダイジングの事業をきちんと確立していこうと思っています。そういう志向があるか、将来像として出版社のままでいいと思っているかでは違うと思います。
三宅:角川映画と角川書店を合併させるとか、アニメ、ゲーム、マーチャンダイジング、出版など、いろいろなものを融合するのは大変だと思いますが、それらを貫くコンテンツの権利の持ち方に革命を起こしつつあるのかなと、われわれは見ているのですけれども。
佐藤:そこまで行っているかどうかはわかりませんが、あえてIPという言い方をしています。今までは持ち株会社の下に8つの出版社があり、それぞれ独自に経営していました。それがワンカンパニーになり、先ほどの3つの挑戦に基づいて、IP事業統括本部を新設しました。グループのIPを統括し、なおかつ自ら作っていく部署です。
三宅:全体を統括する部署として、かなり人材も投入し、新しいチャレンジをされているということですね。こうしたトライは大変なことですから、ほかの出版社ではなかなかできなかった。なぜ佐藤さんにはできたのでしょうか? そうとう苦しみながら決断されたのかなという気がするのですが。
佐藤:それは角川会長が明確なビジョンを示していますし、私たちが大きな改革をやり遂げるための基盤を、今までも作り上げてきたということだと思います。もともと角川書店はいわゆる普通の出版社ですが、そこにアスキー・メディアワークス、メディアファクトリーのような異質なキャラクターの出版社が加わり、人材も入ってきた。それによってIT系のビジネスや新しいキャラクタービジネスなど、今までできなかったビジネスができる態勢が整っていったわけです。
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