日米の株価が「底値圏」に達したと言えるワケ 「底値」と「底値圏」は違うことに注意が必要
これは、2018年1月の18.7倍をも上回る水準だった。この2018年1月の局面で、なぜ割高になったかを振り返ると、2016年11月の大統領選挙でドナルド・トランプ氏が当選し、トランプ政権の経済政策に対する期待が行き過ぎて、1年強もの間、株価の上昇基調が進み過ぎたからだ。
そのため、2018年2月からアメリカの株価は調整局面入りした。今回も同様に、今年2月の終わり頃から米株が下落を始めたのは、極めて自然なことだった(新型肺炎が流行しようとすまいと、アメリカの株価は下落局面に突入して不思議がなかった)と言える。
それはさておき、先週の米株価の位置を確認すると、先週13日時点での平均値では、予想PERは15.4倍まで低下し、上記のレンジ下限にかなり近づいたところにある。
週平均ではなく、日々のPERでみれば、3月12日(木)にS&P500指数が終値ベースでの最安値をつけた際は、予想PERは14.1倍まで下振れし、レンジ下限を一時的に割れてしまっていた。上に行き過ぎた株価は下にも行き過ぎるということだが、その点で、やはり近年で下限を割り込んだ例と比べてみよう。
それは、2018年末から2019年初にかけての株価低迷時だった。その時の予想PERの最低値は14.1倍(2018年12月28日時点)であり、当時はそこから株価はいったん反転上昇に向かった。先週安値の予想PERの水準は、その局面に並んで「十分に売られ過ぎの水準に達した」と考えることができよう。
日本株のPBRではどうなのか?
2)については、すでに日本では昨年から(新型肺炎が流行する前から)経済や企業収益が悪化していた。それはたとえば最近の経済指標でも、日本のGDP統計で、2019年10~12月期の実質経済成長率(前期比年率ベース)の当初発表値がマイナス6.3%と、大幅な不振が示されていたことでもわかる。さらに3月9日(月)発表の改定値では、設備投資の予想以上の悪化を反映してマイナス7.1%に下方修正されたことにも、表れている。
このため、1株当たり利益が今後どこまで低下していくかのめどが立たず、予想PERが下値の試算として使い難いため「PBR(株価純資産倍率、株価÷1株当たり純資産)で下値を推し量るべきだ」と、前号の当コラムで述べた。1株当たり利益が大きく変動しても、1株当たり純資産は、それほどは変化しないためだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら