「自分を不幸にする人」が陥りがちな思考のクセ コロナ騒動でも暴発する「不安」の正体

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「情念」に訴えかけると、論理が破綻していても、情念の力で正しく見えてしまうことが起きます。大きな戦争の時、想像によって敵への恐怖や憎悪がふくらむ事例はまさにそうです。情念を抑えることは、社会全体の幸福のために大切なことなのです。

笑うから幸せになれる

アランはまた、こんなこともいっています。

「かれをあまりあわれみすぎてはいけない。冷酷で無関心であっていいというのではない。そうではなくて、快活な友情を示すことだ」 (『幸福論』)

私たちは、苦境に陥った人に対して、哀れみや同情を感じることがあります。しかしアランは、そうした感情は、むしろ逆効果になると指摘しています。

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こんな話を聞いたことがあります。ある医師の方が言っていたことでしたが、治すのが難しい患者さんを前にしたとき、「気の毒だな」「つらいだろうな」と感じると、それが相手に伝わってしまうので、つい機械的な対応をしてしまうという話でした。

そうしたなか、病気の人やその家族が集まる飲み会が開かれ、医師も参加したそうなのですが、明るい雰囲気で、笑い合い、楽しい時間を過ごすことができたといいます。医師と患者の壁がなくなり、できる限りのことをしようという勇気が湧いたそうです。

『幸福論』が、「あわれみや同情」ではなく「快活な友情」を示すことをすすめていたのは、まさにこのことだと思います。「一緒に飲む」という行動が、情念を乗り越えて、共に前に向かって歩む力を生み出したということなのでしょう。

「幸せだから笑うのではない。笑うから幸せなのだ」(本書より)

世の中、自分の力ではどうにもならないこともあります。しかし「笑う」ことによって、自分と社会をよりよい方向に変えることは、たしかにできるのだと思います。

【番組紹介】100分de名著/Eテレ毎週月曜夜10時25分放送。一度は読みたいと思いながらもなかなか手に取ることができなかったり、途中で挫折してしまったりした古今東西の名著。その魅力を25分×4回=100分で紹介していく番組です。
【漫  画】斉藤的作(さいとう てきさく)/新潟県生まれ。寺嶋裕二「ダイヤのA」でアシスタントの後、2013年秋田書店「少年チャンピオン新人賞」入選。読み切り『100階段のねがいごと』で同誌デビュー。代表作Web漫画『はとえん』。漫画家、ゲームキャラクターデザイン、 イラストレーターとして活躍中。
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