パンデミック宣言で「五輪開催」も無理筋な理由 特効薬がない新型ウイルスには我慢しかない

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こうした中で、13日午後には改正新型インフルエンザ等対策特別措置法が参議院で可決、成立した。新型コロナウイルスが適用対象に加えられ、感染拡大で国民の生活や経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある場合、政府による「緊急事態宣言」が可能になる。

連日、感染者数が増していく日本国内では、これから桜が咲き、花見のシーズンを迎える。すでに東京都では、屋外とはいえ花見宴会の自粛を求めたり、各地で桜まつりが中止になったりしている。

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中国でSARSの感染が広がった原因の1つに、中国人が大きな声で話す習慣が指摘された。

いまでこそ、中国では都市部の外食店などで1人で食事をする風景も珍しくはなくなったが、当時は食事は家族で摂ることが通常で、それも時間帯が集中する。

混み合ったレストランでは一斉に話が弾むからうるさくなる。それでも話をしようとするから、必然的に声が大きくなる。それが身に付き、それだけ唾もよく飛ぶようになる。コロナウイルスは飛沫感染する。

国籍に限らず、アルコールが入ると人は声が大きくなる傾向にある。最近は、自粛ムードにあるが、飲食店街を大きな声で歩く酔い客は見慣れた光景だ。桜の木の下でも大きな声で会話をすれば、それだけ唾もよく飛ぶ。酔っているから、そのことに気がつかないし、自制も利かない。

また、春は新年度を迎え、人生の新しい門出、新生活のスタートを切る人も増える。新入学、入社、転勤のシーズンでもある。そうなると、人の移動も増えることになる。

特効薬もない新型コロナウイルスとの戦いの手段

中国では、春節を迎え、人の移動がSARSはもとより、新型コロナウイルスの感染を増やしたことは、もはや語るまでもない。それによって、日本国内にもウイルスがやって来た。死者が1000人を超えたイタリアでは、10日から全土で人の移動を禁止している。アメリカでは非常事態を宣言したニューヨーク州で、ニューヨーク市北部近郊のウエストチェスター郡で半径1マイル(約1.6キロ)の地域を閉鎖している。

これに反するように、日本国内ではこれから人の移動が活発化する。イベントの自粛で感染拡大防止の効果が見えたとしても、また感染増加を誘発する事態にもなりかねない。

安倍晋三首相が2月26日に、1〜2週間のイベント自粛を要請して、その期間が過ぎ、さらに10日ほどの継続を求めている。普段と違う生活で、大人も子どもも、疲れやストレス、飽きがそろそろ見え始めている。

ここでハメを外すことは簡単だが、この先もしばらくは細心の注意と我慢が必要になるはずだ。

特効薬もない新型コロナウイルスとの戦いの手段は、それしかないのだから。でも、そうしてSARSも克服してきたのだから。

青沼 陽一郎 作家・ジャーナリスト

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あおぬま よういちろう / Yoichiro Aonuma

1968年長野県生まれ。早稲田大学卒業。テレビ報道、番組制作の現場にかかわったのち、独立。犯罪事件、社会事象などをテーマにルポルタージュ作品を発表。著書に、『オウム裁判傍笑記』『池袋通り魔との往復書簡』『中国食品工場の秘密』『帰還せず――残留日本兵六〇年目の証言』(いずれも小学館文庫)、『食料植民地ニッポン』(小学館)、『フクシマ カタストロフ――原発汚染と除染の真実』(文藝春秋)などがある。

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