一畑電車、「新たな中古車両」を探して東奔西走  都会の鉄道車両たちが“第2の人生"を送る

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途方に暮れた石飛さんだったが、同時に「将来的に、東急東横線と東京メトロ日比谷線との相互直通運転がなくなるかもしれず、そうなった場合は1000系に廃車が出るかもしれない」という情報も得ていた。

「もし中古車両が入手できるとすれば、これしか可能性はありませんでしたので、ここに一縷(いちる)の望みをかけました」(石飛さん)

果たしてこの情報は現実のものとなり、一畑電車は自治体からの条件を満たす“願ったり叶ったり”の車両を手に入れることができた。

1000系の導入を前に、線路や施設の改修も進められた。特に課題となったのが「誘導障害」だ。VVVF制御方式の車両が走行時に発するノイズは、信号や踏切の制御システムに悪影響を及ぼす。調査の結果、従来の踏切機器そのままだと踏切が誤動作してしまう危険性のあることがわかったため、改修工事が行われた。

新型車両のデビュー前には、営業が終わった後ですべての踏切に係員を配置し、実際に試験列車を走らせて影響がないことを確認。無事デビューにこぎつけたという。

かつて都会を走った車両が活躍

こうして1000系が導入される一方、1両運転が可能な両運転台車両は適当な中古車両がなく、やむなく新車を製造することになった。このため、全車両を置き換える当初計画は費用面から変更を余儀なくされ、5000系および2100系の一部が残ることに。現在はリニューアル工事が進められており、2020年度に完了する予定だ。

2100系「楯縫号」のうち1両は室内が大幅にリニューアルされ、イベント列車などに活用されている(筆者撮影)

なお、5000系は1編成が島根県産の木材を使った室内に改装され、また2100系も1編成がイベント対応車両「楯縫号」となり、ビール列車などにも使われている。

新たに活躍を始めた元東急1000系と、今後もしばらく残る元京王5000系。特に後者は、その前面や車内などに昔の面影を残しており、わざわざこの車両に会うために東京から訪れる鉄道ファンも少なくないという。縁結びの神様・出雲大社があるこの地に、縁あってやってきた都会の車両たちが、今日も人々の生活を支えている。

伊原 薫 鉄道ライター

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いはら かおる / Kaoru Ihara

大阪府生まれ。京都大学交通政策研究ユニット・都市交通政策技術者。大阪在住の鉄道ライターとして、鉄道雑誌やWebなどで幅広く執筆するほか、講演やテレビ出演・監修なども行う。

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