トヨタ、副社長廃止で注目される3人のキーマン すべての肩書をなくし執行役員をフラット化

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チーフオフィサー以外の地域CEOやカンパニープレジデントなど各機能を担当する執行役員は17人。その多くは50代後半から60代で、50代前半の「若手」である近氏と前田氏は異例の昇進といえる。

豊田社長は役員体制の変更を発表した翌日の3月4日、労使協議の場でこう述べている。

2020年4月からCFOに就く近健太氏とCTOに就く前田氏。

「今のトヨタにおいて、責任者は、私ひとりです。執行役員は、今のトップを支える経営陣であるとともに、次のトップの候補生でもあると考えております。そのためには、1つの機能ではなく、2つ以上の責任範囲を持ち、より大きな視点で会社を見るトレーニングをし、トップの役割である『責任をとること』『決断をすること』ができるようにならなければならない」

この発言から、肩書をなくしてフラット化した執行役員の中で、次世代幹部を養成し、自らの後継を見極めていく意図が見て取れる。2009年、リーマンショック後の熾烈な環境下でトップを任された豊田氏は2020年5月で64歳、6月で社長在任期間が11年となる。かねて、「価値観の共有や企業風土改革は自分の代でやり切る」と言ってきたが、次のトップ候補を着実に増やしたいという思いを強めているのかもしれない。

執行役員になっても降格はありうる

トヨタ幹部は今回の体制変更について、「能力のある人はどんどん(執行役員に)起用していく。ただ、そうした人たちが成長するかどうかはまだわからない。駄目だったら降格になる」と話す。つまり、執行役員に就いても、幹部職への降格もありうるわけだ。

もっとも、執行役員からの降格もありうるという方針について、トヨタ系部品会社の社長を務めるトヨタOBは異を唱える。「降格は、トップに人をきちんと評価する目がないと公言しているようなもの。重い責任を与えるのであれば、それにふさわしい人材をきちんと見極めて配置することが基本ではないか」という理由からだ。

幹部人事に限らず、さまざまな変革を進めている豊田社長は「大変革の時代は、何が正解か分からない。いいと思ったことはやってみる。間違っているとわかれば、引き返して別の道を探す」とかねて強調している。批判を承知の上で人事を見直す中で、一定の結果を示すことも重要になる。

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