使いやすいデザインとなぜか戸惑うモノの差 「バグトリデザイン」とは何か知っていますか
大きなホールや会議室で天井や壁にある複数の照明スイッチをオンにするとき、場所やスイッチがどう対応しているのかわからずに迷ってしまう。通販サイトなどに書き込まれたクチコミ情報を上から順番に見ていると、信用ができるのかできないのか迷いながら読むため、情報を精査するのに時間がかかってしまう。
皆さんの日常生活やビジネスのシーンでも、迷いのバグが起きてしまうことは多いと思います。
迷いのバグを解消するには、迷いが生じないようなデザインや仕組み作りが必要になります。例えば、シートベルトの例ですと、座席ごとに差し込み金具と受け具の色を変える、夜になると金具の差し込みが完了していない場合は、金具を点滅させるといったアイデアが考えられます。
会議室で天井や壁の位置がわからない照明スイッチは、実際の照明とスイッチ面の位置を同じにしたうえでラベリングを施すといいかもしれません。
デザインで解消できることもあれば、通販サイトのクチコミ情報の例だと、「単なる中傷だと判断される書き込みを一定数行うと書き込み不可になる」といった仕組み作りが必要になってきます。
よくエレベーターのドアを開けるつもりで、「閉」ボタンを連打していることがあります。これは「開/閉」の文字や形が一目では判別しにくいからです。こうした勘違いや思い込みなどの誤った認識がトラブルの誘因となるのは「誤認のバグ」です。
街には、駅構内の案内表示など誤認を誘発するサインやアナウンス、大事なことを小さく書いた広告や店頭POPなど、誤認のバグであふれています。Web上でもよく読まないと間違えたりだまされたりしそうな内容が少なくありません。
誤認を引き起こす原因は、ユーザー側にある場合と第三者にある場合があります。ユーザーの場合は、その人の知覚・判断力不足や「知ってるつもり」といった思い込みに原因があります。一方、第三者つまり運営側の場合は、ユーザー目線でのシミュレーションが欠けているために、ユーザーが間違いやすくなっているのです。原因を特定する際にここを深掘りすると、バグ解消への重要な手がかりがつかめます。
バグトリデザインができれば、もっと改善される
エレベーターのボタンの例では、宇都宮大学地域デザイン科学部の研究者の皆さんと共同で、さまざまなデザインの開閉ボタンで認知の早さと正解率を論文化したことがあります。
この実験では、よく見かける三角を組み合わせたもの、開閉の漢字を使用したもの、状態をピクトグラム化したものなど、さまざまなデザインやカラーを試してみました。
正答率の高さやボタンに触れるまでの時間などを計測した結果、最も効果的で誤認が少なかったのが「顔の表情をボタン化したデザイン」でした。
漢字1文字よりも情報が伝わりやすく、性別や年齢といった属性を越えて、ユーザーの誤認が減ったのです。
このように、トラブルが起きたときにモノやサービスのバグの種類を見極めて「バグトリデザイン」を行うことで、問題が解決するばかりでなく、よりイノベーティブで持続的な効果を生み出すことができるのです。
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